今日は歯医者さんまで往復、約6000歩を歩きました。とにかく痛み止めを
飲んで歩く。手術は極力回避です。街は黄砂のせいか霞みがかっています。
でも、春を感じるこの時期、お日様の有り難みをつくづくと感じます。

春霞音信不通の友の来て
◎連載小説「CALL」39
そうだったのか。だが、もう遅い…。取り返しがつかないことをした。そう…。全てが虚しかった。自分は何と愚かな人間なのだろう。恒男の苦しみは何一つ分からずままに、恒男の女々しさに腹立ち、いつまで経っても仕事をせぬ恒男の胸の内など分かろうともしなかった。いや、それどころか、同じ齢の近藤の逞しさや、遊び慣れた近藤が歌うカラオケの甘い旋律に酔わされ、貧相な恒男を裏切ることさえ、さして悪いこととも思わなかった。だが、あのとき、恒男は苦しんでいたのだ。
河合も言っていたが、恒男は仕事に情熱を持っていた。それは知っていた。恒男は自動車の小さな部品を作っていた。
「俺の作る部品が車ば動かしようとぜ」
そんな恒男が、ある日、美佐に差し出した物、それはステンレスで出来たリングだったが、恒男の心をまるで映し出すかのように丹念に磨かれてピカピカに光っていた。
「これ、どうしたと?」
美佐の言葉に誇らしげに言った。
「車の備品たい。そればちょっと工夫して指輪にしたとよ。この部分がなかったら車は動かんけんな。俺はそげな重要な部分ば作りようと。美佐ちゃんにはろくな指輪も買うてやれんかったけん、まぁ、これで我慢しといて。次はダイヤば買うちゃるけんな」