金盞花 | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

日曜日、晴れ!今日のお楽しみは焼肉パーティ。パーティといっても我が家3人で鉄板を持ち出して焼きながらもちろんビールを飲む。さて、3月は楽しむ。結構楽しんでいるような日々。
 金盞花元気で楽しのスローガン
連載小説「CALL」37
 なんとかして隣りの気配を確かめようとするが、それは気配だけで何も見えない。只、多分そうだと分かるのは、あのとき、ホークスファンの恒男が被っていた野球帽、そして、まだ元気だった頃の恒男の笑うと八重歯が覗く口元…、いや、それはわからない、わからないのだ。見えない…。もどかしい…。懸命に見ようとして目が覚めた。
 その日のことだ。思いがけない来客があった。近藤との情事にかまけて初盆を忘れていた、というか、まさかおろそかにするつもりはなかった。ただ、あまりにも月日の経過が早く、八月に入っていたことさえ忘れていたのだった。そんなときの不意の客は、恒男が勤めていた会社の同僚の河合だった。
「西田さんとは仲良うさせてもらって、よう、酒もご馳走になりました」
 河合さんのことは恒男からもたまに聞いてはいたが、家は久留米の外れとかでかなり遠くでもあり、葬式のときに挨拶はしたがこうしてじっくり話すのは初めてのことだった。
「自分も定年になって子どもも自立したもんで、家内と佐賀のおふくろの家に同居することになりました。今年は西田さんの初盆やけんが、引っ越す前に線香ばあげさせて貰いたかと思うてですね」
 そう言いながら小さな仏壇に手を合わせた。正座した靴下の踵の部分が擦り切れて透けて見えた。河合はそれから小一時間ほど話をして帰ったが、それは美佐が初めて知らされた恒男の会社での出来事だった。河合はいかにも悔しそうな表情を浮かべながら茶をすすり話し始めた。
「西田さんは会社を辞めるときは気の毒でしたもんねぇ」
「何か、会社であったとですか?」
「奥さんには何も言わんやったとですか、西田さんらしか。優しい男やったけんが、奥さんに心配かけたくなかったとでしょうね。よう出来た自分にはもったいない奥さんだと、いつも自慢しとられました」
「……」
 思わず黙り込んで河合の話の先を待った。