寒い!もう何もかも凍結しそうだ。心も体も。ついマイナス思考になりがちな日々「ストレス、ストレス」と呪文のように唱えて気持ちを転換する。

道端の名もなき花の斑雪
◎連載小説「CALL」27
それからの数日というもの、美佐はまさに悶々とした日々を過ごしていた。弁当屋の自動ドアが開くたび、近藤かと思いその度に失望する。自分でも気づかぬうちに深い溜め息をついているようで、いつもの威勢のよい、らっしゃい! の声も湿ってしまい、ついに店長から喝を入れられた。
「うちは食べ物商売やけんね、美佐ちゃん、いつもの調子はどげんしたとね!」
和恵には近藤とのいきさつは無論のこと、奥さんを見に天神まで出かけたことも黙っている。
「どげんしたと? 近藤さんの奥さんのことが引っかかっとうとやろ? 余計なこと言うたみたいで悪かったかいな」
和恵の心配そうな口ぶりはいちいち勘に触った。近藤との関係が壊れればいいと思ってるくせに…。相変わらず無言電話は続いていた。