息子の家族たちのクリスマスプレゼントがやっと揃ったので今日は梱包して
送る準備をした。さてさて、コロナって人を疎遠にするものだなぁとつくづく思う。この2年できっと孫も見違えるように大人になってるはず。

ジャズピアノほどよき調べクリスマス
◎連載小説「虹の輪」25
俺のほぼ一年半近くの自炊経験が思わず役に立った。飯はセットすれば勝手に炊けるわけだし、味噌汁さえ作っておけば、後はコンビニの惣菜やカット野菜、納豆、何でも手に入る。もともと料理は嫌いではないし、いつも母の横で味見をしていたからも味にも自信がある。纏めて作り冷凍しておけばどうにでもなるというものだ。予備校から帰宅すると食欲のない友爺のために素麺を茹でた。10日ほども前だったか食べさせてもらった友爺の手製の麺つゆには及ばないが、摺り下ろした生姜と冥加の千切りの薬味に喜んで少し食べてくれた。そしてジョギングついでに曾さんに食べ物を届ける生活が始まったのだった。
田舎の母には心配かけない程度にいきさつを連絡したが、私が手伝いに出てこようかと言い出す母を何とか説得する。母まで出てくれば友爺が遠慮するに決まっているからだ。
「でもあんた、これからが正念場じゃないの。何なら母さんが手伝うわよ」
おふくろは今日にでも出て来そうな気配だったが丁重にしかもきっぱりと断った。
「これは俺の問題なんだ。勉強も手を抜かない、約束するよ」
「あんたが大丈夫って言うんなら」
申し出を却下された母の仏頂面が電話の声から容易に想像できた。
予備校から帰ると、起き出した友爺が木片を手に一心に小さな仏像を彫っていたりすることがあった。友爺の体が理解し難い頑さを身に纏い丸く踞っているのを見て、俺は暫し躊躇いながらも我慢できずに言葉が飛び出してしまう。
「何してるんですか! 寝てないと駄目です。医者にも行かず、薬も飲まず、飯も半分も食べないし、俺のいうことを一切利かないならば、どうなっても、もう知りませんよ」
聴こえぬほどのつぶやきが返ってきた。
「俺にはもう構わんでくれ、頼んだ覚えもないぞ」
テーブルに縋り一歩踏み出す友爺の手から彫刻刀が転げる。そんな友爺は俺の肩がなければベッドまでも覚束ないのだった。
シッツ、シッツ。誰に言うわけでもなく、我が身に、糞! と言ってるのか繰り返しぶつぶつと言いながらも老木はやっと辿り着いたベッドを軋ませて倒れ込んだ。