久しぶりに夜のお出かけになりました。でもドアtoドアなので心配は
ありません。友人のお誘いでX'mas dinnerに出かけます。
期せずして今日は美容室の日でもありました。少しはお洒落して..。

小春日にお誘いありて気もそぞろ
◎連載小説「虹の輪」24
ノートパソコンと寝袋を抱えて友爺の家に戻ってきたとき、テーブルに置かれた岡田さんの名刺が枯葉色に沈んで見えた。蝉の声も途絶えて静かな窓から葉叢を透かして暮れなずむ空がもう夕陽に染まっている。電気を点けたが友爺は眠っているのか開け放した寝室は静まり返ったままだ。そっと近寄り声をかけた。
「友爺、トマト冷えてますよ。塩かけて持ってきましょうか、きっと旨いですよ」
夕陽の残りに僅かばかり浮かぶ友爺の固く閉じた目が少し開いてすぐ閉じた。
「いらんよ」
諦めて目を上げると椅子に掛かる見慣れたベストが目に入る。このベストを着てゴミを拾う友爺の姿が薄暮れた瞼に浮かんだとき、なぜか急に涙がこみ上げた。陽さんが言っていた、友爺の古傷って、いったい何だよ…。
友爺の体力が回復するまで付き添うと決めたのは、岡田さんが帰るときに俺を外に呼んで言った言葉だ。
「実は私は空港通りで漢方薬局をやっておりましてね、いろんな病人の相談受けてますからねぇ、吉岡さんを見て気掛かりなんですが、打ち身は大したことではないとは思いますが、あの背中の青痣は普通じゃあないですよ。問題は酷い貧血ですね。もしかしたら血液の病気もあるかもしれない。勝呂さん、親しいようだから一度精密検査するように勧めてください」
岡田さんの言葉は波動となり間違いなく俺の胸を揺さぶった。そこまでの介入をすることは無論想定外だし、スルーしても何ら咎められることもないとは分っていながら、どうしてもドライに割り切ることはできない何かが俺を突き動かしていた。友爺と曾太郎という謎めいた二人の老人の不可解な関係や秘められた過去が媚薬のように俺の好奇心を誘ったのも事実だが、病気と知りつつ身よりのない老人を放置はできないと思ったのだ。少なくとも医学を目指す人間としてすべきことではない。即決だった。そうと決まれば無駄な時間は一切無い。午前の予備校授業。ジョギングを兼ねた曾さんの家訪問、夜のネットでの講習とみっちりの勉強の時間を取っても、友爺と同居していれば余裕で世話は可能だ。その間に友爺には精密検査を受けることを説得も出来る。頭に一日のスケジュールを組み込むことはパズルをするより簡単だ。ほとんど強制的な俺の同居を友爺が受け入れたのも、本人が体力の限界を察知していたのかも知れない。俺の申し出を断ることも無く受け入れた。ただ、俺が寝袋を友爺のベッドの下に置いたとき言った。
「隣りの部屋を使え」