木曜日は | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

木曜日はコーラスとジャズダンスの日、音楽の中に身を置くのがこよなく
楽しいです。ジャズダンスは二時間の半分はストレッチだからかなり充実
した日となる。今日も楽しかった。夏井いつきさんのドキュメントを見た。
私は彼女の俳句が好き。日々の俳句を考えるのも楽しい。
行き違うマラソンの人息白し
連載小説「虹の輪」23
 友爺の容態ははかばかしくなかった。酷い眩暈はなんとか治まったものの、当初は急激な夏の到来に体がついて行かないのかと安易に考えていた立ち眩みが深刻でいつまでも尾を引いた。それでも無理に起きて出かけようと自転車でいつもの川沿いを走りガードレールに接触して転倒したのだった。たまたま通行中の人が友爺を見知っており担ぎ込まれたところで、俺といえば、あれから毎日曾さんの家に弁当を買って届けていたのだが、預かったお金を使い果たしたところで、数日ぶりに友爺の家を覗いたのだった。
「こんにちは! 俺です、裕太です」
 声をかけながら玄関のドアに手を掛けると鍵は掛かっておらずするりと開いた。そのまま覗き込むと玄関のタイルに見慣れない靴がある。誰か来てるのかな、と思う間もなく人が良さそうな初老の男性が現れた。一瞬、あれっ、友爺に知り合いの人がいたのか。と思った。だが逆に訊かれた。
「どうも。もしかして吉岡さんのお身内の方ですか?」
 慌てて否定する。
「いえ、俺は、僕は単なる知り合いというか…」
 男性がやっぱり、というように、首を垂れ溜息をつく様子を見て不安が掠める。
「あの、友爺、いえ、吉岡さん、どうかされたんですか?」
「それが、自転車で転倒されてですね」
「ええっ! 大丈夫ですか!」
 傘立ての横にグニャリと曲がったトングがある。転倒したときの衝撃が想像できた。
「通りがかった町内の人が、慌てて救急車を呼ぼうとしたら、吉岡さんが頑なに断ったとかで、やむなく家に運んだということです。そこで私が呼ばれたんですがね。私はこの町内の民生委員をやってる岡田といいますが、失礼ですが、お宅はどういうお知り合いですか?」
 町内の民生委員と名乗られて頷けた。
「はい、僕は、勝呂裕太といいますが、吉岡さんとは公園で知り合った友だちというか、そんな感じで。ちょっとしたことを頼まれていましたので、その報告に来たんです。それよか、吉岡さん、どんな状態なんですか? 怪我は? かなり酷いんですか?」
 俺の言葉に、まぁ、どうぞ、という素振りで中に入る。友爺はリビングのソファに寝ていて、俺に気付いたとき、よう、というように手を上げた。
「友爺! 無理はいかんて言ったでしょう! 骨、折れてないですよね」
 俺の剣幕に苦笑いを浮かべた。
「ノープロブレム」
「シャレにならないですよ」
 つい怒りで口調が強くなりながらも、ふざけて言った英語の発音の良さに驚いた、やっぱり普通の老人じゃない。民生委員の岡田さんがほっとしたような声を出す。
「まぁ、吉岡さんは独り暮らしだけど、本人さんは、別に認知症などなく、しっかりしておられますからね、くれぐれもお大事にということで、何かあれば遠慮なく電話してください。私も注意しておりますので」