すぐ近くの桜公園の紅葉ももう終わりだ。一面の朱色の景色で体も染まりそう。
これは絵にしたい!と思ったけれど私の腕前ではなかなか...。それでも描いてみた。

桜紅葉散る公園の人気なく
◎連載小説「虹の輪」17
「曾さんの様子を見に行ってくれないか、多分、食い物にも不自由していると思うから途中のコンビニで弁当を買って届けて欲しいんだよ。なるだけおかずが多いやつを選んでね、酒のつまみになりそうなやつがいいんだ。それから味のないパンね、フランスパンみたいな固いの、好物だからね」
翌日病院で清算を済ませて友爺の家に寄ったとき、友爺はまだベッドの中だった。顔色はすこぶる悪い、まるで巨木が力尽きたかのようで、ベッドの端を握りしめた指が意志に関係なくピクピクと反応している。
「ちょっと横を向くだけでまるで井戸にでも落ちたようで、これはなんかなぁ」
「単なる目眩じゃないように思いますが、精密検査した方がいいと思いますよ」
俺の言葉は友爺には届いていないらしい。ぶつぶつと呟いている。
「さて、これじゃぁ、ちょっとも動けん」
「救急車呼びましょうか」
初めて反応した。
「馬鹿言いなさんな」
声を荒げただけで目が廻ったと見えて両手で自分の頬を押さえ、うわっと呻いた。なら、近くの医者に行こうと言っても、なんとか自力で、とか、そのうち治まる、とか、頑なに言い張っていたが、午後を廻っても一向に症状は治まらず、遂にほどを知ったようで、俺に頼み事があるといいだしたのは、やはり曾太郎さんのことだった。
「それは頼まれてもいいけど、友爺の体をまず治さないと。病院でちらっと聞こえたけど、医者にかなり酷い貧血だって言われてましたね? 精密検査のこと、聞こえてましたよ。俺だってこうしてずっとは付き合っていれないんだし」
友爺は、分ってるというふうに手を上げた。
「大袈裟なこと言うなよ、暫くでいいんだ。俺が回復するまでジョギングのついでにちょっと覗いてくれよ。アルバイトでお願いするよ。それぐらいなら勉強の邪魔にはならないだろう?」
「わかりました。俺も協力しますから、近いうちに精密検査、約束してください」
目を閉じたままの友爺が頷いたのを確認して家を出た。