でも今週から12月に突入ですね。カレンダーは予定で埋まっています。
こんなに詰まってて大丈夫かな〜。ということで今日は一日家にて過ごす
予定です。昨年の大晦日に高熱だした苦い経験があるので、今年は慎重に。

ツワブキの其処此処にあり秋の暮れ
◎連載小説「虹の輪」12
思わず友爺に向かって話しかけていた。
「俺、いつか訊きたいと思ってたんですよ」
「なに」
振り向く友爺はまるで何ごともなかったかのように穏やかだ。しげしげと顔を合わせるのも初めてのことで、見たところ七〇歳くらいか、遠目では分らなかったが、麻色のTシャツは何度も水をくぐって小皺こそあれ清潔な印象を受けた。
「どれくらいゴミ拾いやってるんですか?」
「数えたことないよ」
「ずっと疑問に思ってたんです。どうしてこんな無駄なことしてるんですか」
振り向いた友爺の額にはびっしりと汗が滲んでいる。俺の問いに問いが帰ってくる。
「なら、おまえさんは、どうして走るんだい」
俺は少し返答に詰まりながらも正しいと思われる返事をする。
「それはその、走ることは体にもいいし、第一、お金のかからないストレス発散だからですけど」
「そうか、それはいい方法だよ。俺も君とおんなじだ、ゴミ拾いはお金のかからない暇つぶしさ」
「でもそれって無駄とは思わないんですか、現に今の人だって、弁当食い散らかして、あなたがそれを拾ったところで、ありがたいとも思ってないし」
「それでいいのさ、別に感謝などする必要もないさ、あの人はここで弁当を食い、ゴミをまき散らして俺に反発することが、ささやかな満足、つまりはあやつのストレス解消なのさ」
「でも」
「いいんだよ。世の中に見放されて生きているんだ。どこかで反発でもしなけりゃやってけないよ。じじいの俺だからあいつは反発もできる。これがお巡りや強そうな男ならたぶんこんな態度はできないってもんだ。あやつにもいつか日があたることがあれば、荒れていた自分の過去を思い出して、チクリと良心が目覚めるときがあるかもな、それでいいんだ」
まるで気が遠くなるような慈善事業だ。