いつも覗いていたottchさんのブログ。ottchさんと愛犬のラヴとの暮らしが面白く、またラヴの優しげな眼差しに私までも癒されてましたが、とうとう天国に逝ってしまった。の報せに涙がこぼれます。1度も会ったこともないラヴちゃんですが、まるで我が仔を亡くしたときのように悲しみでいっぱいです。
 空蝉のそれぞれにある悲しみの
連載小説「みつさんお手をどうぞ」31
 木元さんの言葉に、胸が詰まった。そうだったのか…。俺の配慮が足りなかったのだ。全て、俺の認識不足から起きたことだった。俺はそんなこととは露知らず、さも自慢げにみつさんと俺のことを話していた。みつさんのことは一切残さず木元さんに報告し、この仕事をいかに完璧にクリアしているか、そのことばかりを伝えようとした。しかし、それは、木元さんにとっては、辛いことでもあったのだ。本来ならば、自分がするべきことが叶わない、はがゆさ、苛立ち、そんなことも一切俺は気付かなかった。
「俺の了見が狭かったんや。いつの間にか目先が見えんようになってしもうてた。俺の初心は、おふくろが一番幸せでいてくれることやったのに、つい、自我が出てしまって、罪もない藤堂君に、えらい面当てしてしまいました。一昨日のことは、水に流して今まで通り仕事してくれますか?」
「俺のほうこそ、配慮が足りなかったと反省しています」
 木元さんのほっと安堵した顔に、気持ちを汲み取れなかった俺の経験の甘さを思い知らされた。リュックの中から日誌を取り出した。
「一昨日、話が中断して、報告しなかったことですが」
「うん、どれどれ」
 お互いに心の葛藤を残しながら修復しようと懸命だった。
「ここに書いてありますけど、借金の返済が終わってないから必ずしてくれって。何でもおかみさんに借りた金を返してなかったとか」
 俺が指差す日誌の箇所を覗き込む。
「あぁ、これな、これはもうとっくに終わった話や、じいちゃんが工場の運営で困って一時期、借りた金のことなんよ。随分昔のカビが生えたような話や」
「そうなんですか。真顔で言われるので大事なことかと」
「おふくろは金の貸し借りが嫌いな人やったけん、じいちゃんがおふくろに黙っておかみさんに借りた金のことが、まだ頭にあるとよ。あぁあ、俺のことは忘れても金の貸し借りは思い出すばいねぇ。参ったね」
 と、言って目頭を押さえた。
「そうですか、このときは、みつさん、病室を覗かれた師長さんに、深々とお辞儀されて、おかみさん、誠に済まんことで、ご迷惑かけて、とか言われて、俺はチンプンカンプンだし、師長さんも笑って、はいはい、と言われてました」