やっと雨が上がった。でも今夜からまた降るとの予報だ。朝からウオーキングをした(6800歩)。作り置きしているスポーツ飲料が切れたのでコンビニで購入して飲みながらのウオーキング。最近はコンビニも自動ドアのところしか行かない。理由はドアの取っ手を握りたくないから..。ローソンとセブンがほぼ並んでいるが自動ドアのセブンに入る。こんな選択ってコロナでなければしなかった。

凄まじき陽に砕け散る夏薔薇
(すさまじきひにくだけちるなつそうび)
◉連載小説「みつさんお手をどうぞ)29
「しかし、何で、藤堂君は編み物のこと詳しいの?」
あまりにも不思議そうに訊く木元さんの目がまるで好奇心いっぱいの子どものようで思わず笑ってしまった。
「はははっ、俺、ばあちゃん子でしたから、子どもの頃、ばあちゃんの編み物する横で、俺も真似して編んでたんで。だけど、こんなことが役に立つなんて。本当、どんなことでも、仇やおろそかにはできませんねぇ」
「そうやな、何ごとも経験やなぁ」
一渡り、喋って珈琲を飲む俺の耳に木元さんの独り言が聴こえた。
「そうやった…、そうたい! おふくろは高倉健のファンやった」
木元さんがぼそっと言った。
「嫁がぼやきよったよ。自分が買ってきた靴下は、いつの間にかゴミ箱に捨てられとった言うてねぇ、おふくろは、ちびてしもうた靴下をいつまでも履いとったが、編み物とは、気がつかんやったなぁ…」
何だか木元さんがしょげたように元気がなくなったことが気になりながら、日誌には書けなかったみつさんの言葉などを探しては話した。木元さんが俺の話に乗るように言った。
「それに、まぁ、俺の欲目かも知れんけど、おふくろ、何かちょっと、色気があって、かわいいとこあるやろ?」
「はい、それはもう! かわいいですねぇ!」
「ほう…、そうか」
俺は、この仕事を思いついた木元さんを喜ばせたかったのだ。
「もはや、赤の他人とは思えません」
ところが、俺の返事の何が気に触ったのか、木元さんがいきなり拳でテーブルを叩いたので、珈琲カップがソーサーの上で大きな音をたてて揺れた。
「赤の他人とは思えん? 何や、それ!」
木元さんの荒げた声を初めて聴いた。いったい何が木元さんの逆鱗に触れたのかさっぱり解らなかった。
「俺、何か…」
「藤堂君、君には、ほんま、よくしてもらってるよ。けどね、忘れんといてんか。君がおふくろに気に入られたんは、俺のもくろみ通りの計画なんや。君は俺が雇った、ただの代理息子なんやから、そこのとこのメリハリはしっかりつけてくれんと困るで! おふくろにはれっきとした俺というほんまの息子が存在しとうことを忘れんように。なんや、偉そうに、何が赤の他人とは思えんのや! あんたは立派に赤の他人や」
吐き捨てるように言うと伝票を鷲掴みにして立ち去る木元さんをあっけにとられて見送った。木元さんは自分でたてた代理息子の計画が成功したことをあんなに喜んでいたのに、おふくろのこと、よろしく頼む、この仕事を辞めてくれるな、と言ったそばから、何を腹立てているのだ…。意味が解らなかった。