汗をかかないタイプで下手をすると体内に熱がこもって熱中症になる私が
最近、ウオーキングにスポーツドリンクを携帯し何度も飲みながら歩くことで
体質が改善されてきたように思う。今日も午前中、約5000歩ほど、スポーツドリンクを飲みながらウオーキングしたけれど、汗が流れるほど出て心地よかった。

日盛りに黙々とすウオーキング
◉連載小説「みつさんお手をどうぞ」22
俺は月、火、木、金の四日を半日近くみつさんの傍で過ごした。朝、行くと一番に熱いタオルを絞って顔を拭いてやり、次に両掌をタオルにくるんで曲がった指を軽く揉んでやる。みつさんは心地よさそうに目を瞑って俺のするがままに身をゆだねている。バイトは三時間の約束だったが、そのときどきで遅くまでいるときもあった。帰ろうと思いながら、立ち去るタイミングを失ってしまうときは、三時も過ぎた辺り、みつさんがとろとろと微睡む頃合いを見計らってそっとその場を離れることにしていた。
ここは何より空調が完璧で、安普請のプレハブアパートでの灼熱の暑さや極限の寒さに喘いでいた俺にとっては天国のようなものだった。老人特有な臭いも馴れてしまえばそこまで気になることもない。窓際を手際よく片付けて、その一画にノートパソコンを持ち込み、みつさんのそばで半日を過ごした。世話といっても大したことではない。みつさんの傍にいることだけが俺の仕事のようなものだった。木元さんからも言われていたが、些細な声かけがみつさんの精神を安定させるようで、例えばおむつを交換したり、ちょっとした粗相があったときなど「おふくろ、大丈夫だよ」とか「平気、平気」とか、その声かけ一つでもみつさんの気持ちは確かに和らいだ。
「以前は、おむつ交換のときは、嫌がって暴れたりとかは日常茶飯事で、外したおむつを壁に向かって投げつけたりとか、いろいろ大変だったけど、今は全然,違う。息子の力って大きいのねぇ」
病室に出入りしているヘルパーさんが感心したように俺に言った。
みつさんは調子がいいときは、背中に大きなクッションを入れてベッドに座り、俺に何かと話しかける。
「ねぇ、そちらさんはどなたでしたかねぇ?」
最近はもとから俺は浩志だったかのようにごく自然に受け入れている。
「ひ、ろ、し」
「ほぅ、浩志やったか、学校は行かんでんよかとね?」
「うん、ここで勉強しようけん、よか」
「そうな…」
パソコンを打つ俺の指先をじっと見つめているが五分もすれば、また話しかけてきた。
「ねぇ、ところで、おたくは、もしかして…」
「ひ、ろ、し、息子の浩志」
「ああぁ、そうでしたな」
延々と際限なくこんなやり取りを繰り返していた。