昔は一筋にやれる私だったのに、最近本分を忘れているときがある。物心ついたときから約半世紀は音楽にのめり込んで仕事をしていた。うまく小説を書くことにスライドしてやりたかった文学の世界にものめり込んだ。だが、最近の私って
時間の流れに乗れてない、とつくづく思う...。さて、今日は友人においしいランチをご馳走になり、楽しくおしゃべりしました。さて、今から頑張ろうっと!
 おしゃれする機会もなくてスカシユリ
連載小説「みつさんお手をどうぞ」12
「いや、私は君が気に入ったよ。仕事の説明もせんで、一方的にここまでつきあわせたのに、いやな顔一つせず、こうして付いてきてくれた君は、気も長そうやし、温厚な感じや」
「はぁ」
 また、車が大きく揺れて俺は左手を伸ばし思わず、左上のガードに捕まる。
「実はな、もう一人、面接する人というのはな、おふくろなんや。というても、おふくろは認知症で、ほとんど何もわからん、恍惚の人や。仕事の内容はおふくろの相手をすることなんよ。世話はあんまりせんでもええ。おふくろは病院とホームを行ったり来たりしとるから、完全看護で、世話いうたら、せいぜい、身の回りの洗濯ものくらい。それくらいはコインランドリーも設置してあるから、してもらわんといかん」
 話が興に乗ると若い頃馴れていた関西弁が混じるらしい。
 
 車は七隈四つ角を通過し福大病院から、更に西に走った。木元さんは見た目温厚そうだが運転はかなり荒い。その上、この時期、年度末のせいであちこちで道路を掘り返しているから、かなり揺れた。
「今日までに十二人も面接したて言うたやろ」
「はぁ」
「そのうち二人はまぁまぁやったやけど、おふくろの面接でアウトになってしもうた」
「で、仕事っていうのは、木元さんのお母さんの相手を三時間すればいい、それだけなんですか?」
「そう。でも、どう? やれる自信ある? おふくろはおしめやけど、そんなんは汚れてるときにブザー押して看護師さんかヘルパーさんに替えてもらえばいいから、藤堂君の手を汚すことはない。ただ、君がやることはその後のおふくろの精神的フォローやな」
「…と言いますと…」
「おふくろは惚ける前は気丈な人でねぇ、惚けてても未だに人様に迷惑かけることを嫌うからね、例えば急に正気に戻って嘆いたりさ、泣き出したり暴れたりとか、あるんだよね、そんなときの精神的なフォロー、つまり、息子みたいな仕事や」
 正直、おいしい仕事だと思った。