無観客の開会式というのに会場周辺は野次馬ですごい密。こんな状態を防ぐためにも無観客じゃなかったの?もう止めようもないコロナの爆発的感染...。
なんでみな、静かにできないのだろう。
 炎昼をカーテン閉じて潜むなり
連載小説「みつさんお手をどうぞ」6
 俺が、このバイトの依頼人、木元浩志と出会ったのは今年の一月中旬のことだ。今年の成人式も相も変わらずというか意味もなく荒れていた。行きつけの中華料理屋の油まみれの薄汚れたテレビ画面では、エネルギーを持て余した若者たちが会場で大暴れする成人式のニュースが流れている。どうせ、親の金だろうに、紋付袴やタキシードを着せてもらい何の不満があるのだ…、所詮、舌ったらずの若者の遠吠えに見えてくる。俺も五年前には成人式とやらを迎えたが、その頃には既に父母ともこの世になく寂しいものだった。それでも当時住み込みで勤めていた整備工場の社長が家族ぐるみで、お祝いと称してファミリーレストランに連れて行ってくれたっけ。まだ三十代の人のいい社長は、俺とは遠縁といっても微かに繋がってる程度の関係だが、俺のことを気遣い、奥さんもやさしい人だった。
「ケン、おまえは前途有望な青年やけんな、頑張れよ」
 三歳と五歳の悪ガキが二人、レストランの中を走りまわるしで、まぁ飲めや。とすすめられたビールを持つ社長の爪は滲み込んだ油で黒い半月を描いていた。アルコールがほとんどダメな俺にとって成人になった祝いのビールはやけに苦かったことを強烈に覚えている。そんな昔のことを意味もなく思い出しながらいつものように新聞の求人広告を見ていたのだが、ふと、おもしろそうな求人に目がとまった。

「求む。但し年齢二十五歳までの青年。老人が好きな人。労働時間(週四日、一日三時間程度)日給五千円(交通費込み)委細面談、連絡乞う」