最近、本当に食べることしか楽しみがない。というか一昨日の夜の CM見てて
どうしても食べたくなった「ちゃんぽん」美味!
掌編小説掲載します。連載8話の短い作品ですがよければ読んでくださいませ。

何かしらときめきありて夏は来ぬ
◉連載小説「夏蕨(なつわらび)1」
「きいちゃん、きいちゃん」
後ろから声がして、それは栗山さんだとすぐに分かった。振り返ると、案の定、いつもの見慣れたバンに乗った栗山さんが窓から顔を出している。紀伊子が道の隅に寄ると徐行しながら紀伊子の横で止った。えんじ色の毛糸の帽子の下に日に焼けた栗山さんの細い目が笑っていた。
「きいちゃん、今、仕事の帰り?」
鰯雲のだんだらをオレンジ色に染めた太陽は今にも沈みそうで、川向こうの屋根の辺りに引っかかっている。
「あら、栗山さんも?」
「うん、そう、少し冷えてきたよねぇ、きいちゃん、もし暇なら これから、たまるで待っててくれない、一緒に呑もうよ。僕さ、車置いたらすぐに行くからさ」
紀伊子の一瞬の表情を逃さず、栗山さんは親指をグイっと立ててOKのサインを送ると走り去った。
紀伊子は総合病院で看護師をしている、明日は早出だけど、ま、少しならいいか…。道筋を変更して、たまるへとむかった。