まとわりついた風は少しだけ夏の余韻を置き去りに
大通りの向こうの欅の木あたりに停まる
さわさわと揺れる欅の声が聞こえた気がした。
「もうおしまいかい、案外根性なしじゃないか」
「バカ言うな、俺様がどれほどの猛々しさで暴れまくっていたか
知らないとでも言うのか」
「いやぁ 実に心地よい暑さだったよ、おかげでこの繁りを見てみろ
まるで小山のような繁りぶりだろう」
「じゃぁ、この空蝉を見てみろ お前の足元に転がる
干からびた抜け殻がカラコロと転がるさまをな」
あんただって抜け殻じゃないの、もう夏の威力は無いね
どんなに威張ってもその先に秋が見えてるよ
また風が通り過ぎた 透明な風に秋の色が見えた