「ねえ、結構ショックじゃない?」
「え、何が」
「だってさ、佐知子、今年の春にはひ孫が生まれるのよ。そしたら、あなた、ひいばあちゃんだよね」
佐知子の顔が一瞬引き攣った。
「そういうことになるんだ…」
「まぁ、形式としてはそうなんだけど、佐知子はまだまだ若い。とてもひいばあちゃんには見えんけん安心し」
カナエの言葉に佐知子はすっかり悟りを開いたように首をゆらゆらと振った。
「いいや、私もつくづくと思い知らされたのよ。お正月にさ、大野の家に招かれたんだよね。そしたらそこの奥さん、いわゆる里沙にとってはお姑さんになるんだけど、何歳と思う?」
「ということは相当若いんだ」
「そう、まだ、四〇歳手前なんだって、私はもう出る幕はないのよね。何でも輝喜を産んだのが二〇歳の頃だっていうのよ。しかもできちゃった結婚だったとかで、里沙とはすっかり意気投合よ。里沙も居心地が良いのかすっかり懐いててさ、私は落ち込んだ…」
「そうよねぇ、私だってあなたと同じ歳だもん、孫も里沙ちゃんとはたった一つ違いよ。もう高校卒業の時期だし、私にも遅かれ早かれあなたと同じ運命だわ」
「あのね、陣の助がね、またペア組んでダンスしようっていうのよね」
「良いじゃないのよ。やれやれ、ひいばあちゃん」
「ん、もう!」
佐知子はうんざりしたような声を出したがその声には翳りがなく、むしろ恢恢としている。