連載小説「幸せのパズル」11 | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

「送ってこんでもよかよ」

 カナエの言葉を無視して肩を並べて楓並木の舗道を歩いた。

 恭一の肩ほどの高さにカナエの髪が揺れている。

「このまえはすまんやった」

 素直に言葉がするりと口を突いた。

「なぁん」

「だけん、このまえちょっとふざけてさ」

「なんね、本気やなかったと」

 口を尖らせる。

「本当の本当はまじめさ。そしたらいきなりバシって」

「当たり前やろう。もう入れ歯の齢やろうもん。気持ち悪かよ」

「言いにくいことを思いきり言うねぇ」

「真実を言ったまでよ。もう若くはない。この齢になったら男も女もない。人間と人間の付き合いやろう」

「まあな」

「もう、これからは新しく友達ができる齢でもない。今の友達を大事にして持ちつ持たれつ継続を宝にせなね」

「わかりましたよ。相変わらずカナエさんは強いねぇ」

「あたりまえやない、強くしとかな。ここまで伊達に女一人で荒波乗り越えてきたわけじゃないとよ」

「あんときはカナエを見よううちについ気分が青春に戻ってさぁ。全くもって一方的な俺の一瞬の気の迷いだったわけよ」

「そうそう、迷いよ、気の迷い。海みたらつい感傷にふける。年寄りの冷や水たい」

 先を行くカナエのピンと伸ばした背筋を見ていた。