結局、佐知子に押し切られて土曜日の居酒屋行きが決定してしまった。カナエはまだ怒っている。だが、佐知子の言うことも本当だ。良いことも悪いことも三日で忘れるとは言うが、まさに気持ちはまるでタバコの煙が空中にほどけるようにうやむやに空中分解してしまっているのだ。ただ、今日の今日、恭一を誘うことが面映ゆかった。だが、これは思わぬことで簡単に乗り切れた。
夕方の電話は恭一からだった。
「さっきは悪ノリしてごめん」
思わぬことでスムーズに繋がった。
「分別はつくばいね」
「すまん! そやけど俺の気持ちは変わらんけんしようがなかろ」
「それが気持ち悪いったい。この齢で男も女もない人間同士の付き合いがなんで出来んとね」
「はい、反省してます」
なぜか恭一の若い頃の顔が浮かんだ。昔からやんちゃしてはいつもそんな謝り方をしていた。
「もういいけん、でも言っとくけどもう悪ノリはせんでね」
「はい、わかりました」
「あんね、私の友達がね」
佐知子の誘いに一も二もなく乗ってきた。
「そりゃ、よかね。応援の後の居酒屋が楽しみやね」