「えぇぇっ、この歳で若い頃の彼氏と再会? 失望するのがオチよやめときな」
佐知子が言ったのだ。
つい先日のことだった。カナエが何十年も昔、青春を謳歌していた頃に付き合っていた神村恭一と、期しくも連絡が取れて再会することになった、と打ち明けたとき、ズバッと言い放った佐知子の声が何度もリフレインする。
卓球を終えて体育館の休憩室で一服していたときだ。
「失望しかないって。失望すると思うよぉ。この歳で今更会ってもさぁ、昔の夢は夢として大事にしとけば良いとよ。まぁ、そんなもんよ」
ほんの少しでも胸のときめきを期待していたカナエの顔が血の気が引くように白けて固まったことに気づいて、まずいこと言ってしまったと思ったか佐知子が慌てて言い変えた。
「ごめん! 水を差すつもりはさらさらないとよ。会いたいなら会えば良いさ。そりゃ、あんたの自由やけん、夢を持つのも自由さ。私が口を挟むことじゃぁ無いけん。ごめんごめん あぁあ、歳はとりたくなもんよ」
プリっと上を向いたままのカナエに佐知子も胸のうちを明かす。