小説「幸せのパズル」2 | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

 最近これほど急いだことはない。途中恭一が追いかけて来ないかとむやみやたらと早足で歩いたおかげで間一髪で間に合った博多駅行きの電車はがら空きだった。シルバーシートに座るとワンピースの裾から伸びた素足は銀粉をつけたように砂がこびりついている。息切れをごまかしながら、まぁ、良いわ…。ゆったりと背中を座席に委ねて目をつぶる。つい今しがたまで見ていた青い空と水平線まで続く海、打ち寄せる白い波がしらの砂浜に恭一の黒く焼けた顔が重なると現実に引き戻されて思わず、違う。とつぶやいて首をゆっくり振った。確かに若い頃の恭一も真っ黒に日焼けしていたけれど、それは海三昧で過ごした若者の勲章みたいなもので、今のゴルフ焼けしたシミだらけの黒さとは全く違う。肩で深く大きいため息をついた。佐知子の言った通りだった。