連載小説「CALL」6話 | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

 二人は恋愛結婚だ。顔立ちの良い恒男を美佐の方から好きになった。四歳年下の恒男に自分から積極的にモーションをかけて結婚に漕ぎ着けたのだ。寡黙だが、高校時代は野球部ではセカンドを守り筋骨も逞しかったのに、いつからこんなふうに意気地なしになったやら…。

 

 鬱は、がんばれ! とかしっかりして! だとかとにかく激励してはいけない。気長に本人がその気になるまで暖かい目で見守る…、そんなことは分かっていた。医者や友人や親戚から耳にたこができるほど言い聞かされてきたことだ。だが、どちらかといえば気が短い美佐には、恒男の鬱を見守るなんてことはほぼ拷問に近い。しかし、少なくとも失業保険が出ている頃までは、いい顔もできた。

「恒男さんは今まで働き詰めやったけんね。ちょっとは休んでもいいさ」

 結構そんな寛容な気持ちもあったのだ。

 だが家に決まったお金が入らないということは、もうそれだけで家を暗くする。失業保険も切れ、美佐のパートだけが唯一の収入となる頃には心の余裕は無くなり、夫はただの怠け者にしか見えなかった。ぐだぐだと日々を暮らし、三食しっかりと只飯を食べる夫の、一日二合と決めた、唯一の楽しみの晩酌さえも無性に腹がたってくる。