普通の村人に戻ったHAGEの幹部・カッツェの正体であるが、阿沙比奈小学校の教師・八原進助の父・則勝であった。かつては建設会社で営業部長だったが、業務の功績を認められ三役に昇進。ところが、あることがきっかけでHAGEから勧誘を受けた。そのきっかけとは、一昨年会社が経営不振になり赤字化したとき、彼は資金繰りに苦しんでいた。そこで知り合いからHAGEという裏組織が資金提供してくれるという話を聞き、藁にもすがる気持ちで頼んだのだ。そのおかげで会社は経営難から脱出できた。当時、HAGEには幹部が存在していなかったため、則勝に白羽の矢を立てた。最初は断ったが、長年勤めていた会社を退職、三役の経験や即戦力で幹部となった。高身長で筋骨隆々の彼は学生時代、空手選手として数々の大会に出場し、賞を総なめにするほどの実力だ。息子の進助も空手部で活躍し父のDNAを受け継いでいる。もう一人の幹部・シャネットは、実は則勝の妻・可都江だったのだ。五人の子の母で、進助は三人目で唯一の男子。モデルのようなスラリとした体型に小顔、あどけなさが残る笑顔はとても五人の子の母とは思えない。良家の子女として生まれ育ち、学生時代からバレーボール一筋。結婚してもママさんバレーの選手として数々の大会に出場、優勝経験も持つ。則勝とは職場恋愛で、可都江に一目惚れした彼は交際を申し込み約二年の交際を経て結婚、新婚時代は則勝の両親と同居していたが、いずれも他界している。以来、専業主婦として多忙な夫を支え、子育てに奔走した。やがて成長した子供たちはそれぞれ独立、孫もでき悠々自適な生活を送っていた。しかし彼女も則勝とともにHAGEの一員となり、ブラックインサイドの総統・ドクターネンチの秘薬によって召喚された怪人となった。その姿はしなる細身の体に全身黒のレオタードをまとい、頭部にはアンテナ状の角、その先端から光線や電磁波を放つ。とがった耳、猛獣のような長くとがった牙が特徴で、その牙には猛毒を持ち、噛まれると致命傷になる。だが、折られるとたちまち戦闘力が落ちて姿を消してしまうが、彼が発明した”アクソマール”によって復活、さらにパワーアップした。しかし、一度復活してもダイヤモンド・ヴェールにやられてしまい二度と復活することはなくなった。
一方、ダイヤモンド・ヴェールの正体だが、進助の妻・珠美だった。則勝や可都江は義両親にあたる。実家は隣町の百合園市でフラワーショップ「リリーガーデン」を営んでいた。娘である彼女はエステティシャンだが、仕事が休みの日には店を手伝っていた。ある日、彼女が配達のため結婚式場から帰ると、両親は血を流して倒れていた。二人とも即死状態だった。レジカウンターに行くと、レジから売上金が盗まれていた。
(いったい誰の仕業なの…)いきなりの出来事に珠美はあまりのショックで動揺を隠せなかった。しかも近所から犯人を目撃した情報すら入らず謎に包まれている。おそらくHAGEによる犯行らしいが、行方をくらましている。彼女は、
(絶対犯人を見つけてやる。親の仇は必ず返してやる)その想いを胸に刻み、見知らぬ者への仇を討つ決心をした。あれから数年が経ち、中学時代の同級生だった進助と結婚したが、両親がいなくなった彼女にとって寂しい挙式となった。いつか親の仇を返したい願いはやがて天に届き、彼女にある異変が起きた。その時だった。彼女の前に突然、見たことがないまぶしい光が体を包むと、
「こ…これはどうなってるの…?まるで空からダイヤモンドが降ってきたような…」その光は彼女にパワーを与え、
「オマエニパワーヲアタエル。オマエニシカワカラナイヨウニ、ダレニモスガタヲミセルナ」天からの声が届いた。
(何のことかわからないが、親の仇討ちはできるかも…)すると、緑のベレー帽にダイヤモンドをあしらった仮面を付け、ピンクのレオタードに黒いブーツ、手には赤い鞭、そしてきらびやかなヴェールのようなマントを羽織った姿に変身したのだ。
「オマエハダイヤモンドヴェールダ。ヨノナカノアクノタメニタタカウノダ」ダイヤモンド・ヴェールに変身させられた珠美は両親の仇を討つためにHAGEと戦うことを誓った。噂ではHAGEの資金源はありとあらゆる店の売上金を盗み、某団体を偽って振込をさせるなど、実に巧妙かつ悪質な手口で懐に収めているのだ。さらに、ブラックインサイドという秘密結社が、彼らを操り指揮をとっているのだ。組織については世界から有数の資産家が名を連ね、総統であるドクターネンチがそこから資金を集めHAGEなどの傘下組織に投資している。ドクターネンチは、かつてはしがない研究者だったが、いくつのも病院を経営していた父から巨額の遺産を相続し、自分を含めた世界各国から資産家を集め”ブラックインサイド”を設立。世界征服を夢見て悪と欲の道を邁進している。慈善団体だったHAGEを闇組織に変えた張本人で、その実態は幹部にしか知らされていない。そのことは絶対に部下や外部に漏らしてはいけないと口止めされているからだ。珠美の両親も、おそらくHAGEの被害者の可能性が高く、金目的の犯行かと思われる。義父・則勝や義母・可都江もそのメンバーで、後に二人とも幹部にのし上がっている。普段は温厚な二人だが、そのことに触れることができない。訊いたところで自分の命も親みたいにやられるから、と。
(きっとお義父さんもお義母さんも洗脳されてるんだ…早く解かないと…しかもHAGEの幹部だったなんて…)
(つづく)