「いいぞ!もっとやれ!!」

 「カッコいいぞ!ダイヤモンド・ヴェール!」

 「奴らにとどめを刺してくれ!」村人たちはさらに声援を送った。シャネットはうずくまったまま、もはや瀕死状態だった。ダイヤモンド・ヴェールはとどめを刺すために黄金色に輝いた鞭を高く掲げ、

 「天の守り神よ。悪しき汚れた心を浄める嵐を呼びたまえ!」と叫んだ。すると、ゴゴゴゴ…と雷鳴とともに稲妻が走り、再び鞭にエナジーを貯めると、ダイヤモンドのような輝きに変化した。

 「ダイヤモンド・サンダー・ハリケーン!!」その鞭を大きくしならせると、やがてダイヤモンドを散りばめたような嵐になってシャネットはじめHAGE一味を襲った。

 (ヤバい…ヤバいぞ…吹っ飛ばされてしまう…)

 「これを受けた者は汚れまくった心を浄める。オマエたちの歪みきった心を、純粋無垢な心に入れ替える。愛する阿沙比奈村のため、村人を守るのだ。オマエたちはそいつらに操られている。いい加減目を覚ますんだ」ダイヤモンド・ヴェールはHAGEの邪悪な心を浄化させると、奇跡的に回復したビアンコも嬉しさで興奮した。

 「ビアンコ、落ち着くのだ」彼女はビアンコに頬ずりしながら機嫌を取った。

 「おい!そんな雑魚っちい技で怯んでる場合じゃないだろ!」カッツェが部下に檄を飛ばすと、

 「雑魚はオマエたちだろ…もっともっと苦しめ…村の平和を壊し己らの手中に収めるために平気で悪事を働く。ワタシはオマエたちを地の果てまで連れていく!」ダイヤモンド・ヴェールはHAGE一味に我慢の限界になり、村人たちも応戦した。

 「てめえら、とっととこの村から出ていけ!」

 「そうだ!部外者はもう用無しだ!阿沙比奈村は俺たちのものだ!」

 「でないと、これでやっつけてやるぞ!」かたつむり農園の立見宗二郎は鍬を持ってやっつけるフリをした。すると、

 「ひえーーーーっ、もう襲わないでくれ!」

 「殺されちまう!」

 「あははは…何ビビってんだ。どうした?やり返せないのか?」宗二郎は挑発したが、

 「もう勘弁してくれよ。まいったな…俺たちの負けだよ…」さらにダイヤモンド・ヴェールはビアンコにまたがって部下たちを蹴散らした。勝利を確信した彼女の笑顔はダイヤモンドのように輝いていた。一方、ダイヤモンド・ヴェールの鞭による浄化作用ですっかり闘志をなくした部下たちにカッツェは、

 「貴様らはなんてザマだ!これでも私のしもべか!あんな雑魚女に負けて情けないと思わないのか?」と激怒していた。

 「悔しい…あいつに勝ってドクターネンチ様を喜ばせたかった…すまない、申し訳ない…」

 「もう貴様らはHAGEの一員でない。私とシャネットだけでやっていく」部下たちは涙ぐみながら、

 「カッツェ様、シャネット様、今までお世話になりました。私どもはこの場限りでHAGEを離脱します」とHAGEとの決別をした。

 「ああ、辞めてもらっても結構だ」部下たちの離脱でカッツェは責任を果たせなかったことにより、ブラックインサイドの総統・ドクターネンチからの制裁が待ち受けているのだ。全身傷だらけのシャネットはいぜん瀕死状態のままだ。何かに叩きつけられたかのように意識がぼんやりしていた。虫の息で、

 「またアタシの負けだわ…博士には申し訳ない…」と、つぶやきながら息絶えた。

 「シャネット!!」カッツェが叫んだが、返事は返ってこなかった。

 「頼む!返事をしてくれ!目を覚ますんだ!」やがて彼は涙を流し、その涙はシャネットの頬に落ちた。

 (これからどうすればいいのか…しもべが去り、相棒もこの状態だ…私一人では何ともできない…)カッツェは落ち込みながら、これからのHAGEの行方について考えた。そこにブラックインサイドの総統・ドクターネンチがやってきた。彼は、シャネットの無残な姿を見て、

 「なんてことだ…私の”秘密兵器”がこんな姿に…」

 「ドクターネンチ様、このような結果になってしまい悔しくてたまりません。我々も懸命に応戦をしましたが、思った以上に相手が強かったです。でもシャネットのせいにしないでください」

 「どうしてだ?」

 「幹部の一人である私にも責任があります。自分の力不足と思ってます。この件については見逃してあげてください」

 「ふざけるな!なぜそうなる?」ドクターネンチは怪訝そうな目でカッツェを睨みつけると、

 「いっておくが、もうお前たちには二度と援助はしない。見損なったぞ。これからは自分たちの力だけでやっていけ。散々私どもを裏切りやがって」

 「その覚悟はしていました。ただ相手が悪すぎたんです」

 「そんな言い訳はいらん!それまでは私も協力した。だが、その任務は終わった」

 「シラハタワールドはどうなるんですか?その実現は貴殿も楽しみになさっていたじゃないですか」

 「知らないね。お前らとは縁を切ることにした。もう関わることがなくなったからな。勝手にするがいい。これで私は失礼する」

 (ドクターネンチ様…絶縁状を突き付けられてしまった…もう我々にはあとがなくなったのか…)カッツェは気を落とし、シャネットを背負いながらHAGEの立て直しを考えるものの、

 「HAGEは解散するしかないか…でも…」

 

 

 (つづく)