HAGE一味による理不尽な手口に不満を感じていた毛妻村長をはじめ村人たちは、このまま泣き寝入りするわけにはいかない。たまりにたまった不満をぶつけるためにも、やはり”あの人”の力が欲しいのだ。そこに、神出鬼没のごとく再びあの仮面女が白馬に乗ってやってきた。幹部のカッツェが村役場を去ってまもなくのことだった。彼が自分のアジトに帰ろうとした直後、
「ついに現れたな、ダイヤモンド・ヴェール…」ダイヤモンド・ヴェールは彼の前に立ちはだかると、どこかで見覚えがある顔だと思った。
(あの人はもしかして…)二人が目を合わせると、カッツェも見覚えのある顔と思った。
「貴様、まさか…いや、気のせいか」ダイヤモンド・ヴェールは不思議そうに彼を見つめ、彼らの姑息なやり方に憤りを感じ、やるせない気持ちになった。
「カッツェよ…オマエはなんて卑怯で欲にまみれた汚いヤツだ。昔のオマエはそんなヤツじゃなかった」
「なぜ私のことを知ってる」
「オマエは昔、空手の選手だったそうだな。なぜあんなことを…」
「確かに私は空手選手だったよ。そんな私に勝てるとでも思ってるのか。私のしもべはまだまだいるぜ。皆ども、かかってこい!」と大勢の部下を呼ぶと、ぞろぞろとやってきてダイヤモンド・ヴェールを囲った。
(懲りないヤツらね…)
「ダイヤモンド・ヴェールよ、この間はよくもやってくれたな!今度はやられっぱなしじゃいかないぜ。必ずお前を倒して勝ってやる!」彼らは復讐を誓い、
「奴の息の根を止めろ!」カッツェは彼らに指示を出すと、彼女に襲いかかった。
(な…なに…あの時と全然パワーが違う…もはや倒せる相手ではなくなった…)前回、戦った時よりパワーアップしている彼らには一筋縄ではいかない。だが、彼女は力をふり絞りながら自分の力を出し切って挑んだ。
「下衆ども!かかってきな!」しかし、今回の戦いは彼らにとってリベンジであり本気だった。
「パワーアップした俺たちをなめんじゃねーぞ!こんどこそ借りを返すからな!」
「相変わらずショボい連中ね…強がり言っちゃって」と、ダイヤモンド・ヴェールはいたって冷静だ。
「貴様、今回は勝てると思うなよ。奴らにはブラックパワーエナジーを注入したからな」カッツェは”ある者”に頼んで部下たちにパワーを注入させた。さらに、もう一人の幹部が現れた。モデルを彷彿とさせるスラリとした細身の体に全身黒のレオタードをまとい、頭部にはアンテナ状の角があり、その角から光線や電磁波が放たれる。それを受けた者は意識を失いHAGEの手下として洗脳させられる。鋭くとがった耳、獲物を捕らえるかのような眼光に猛獣のような長くとがった牙が特徴だ。その牙には猛毒を持ち、噛まれると全身に毒が回り命を落とすことがある。しかし、その牙が折られると戦闘能力を失い姿を消してしまう。彼女の名はシャネット、見た目によらず強靭なパワーの持ち主だ。HAGEを悪の組織に陥れたブラックインサイドの総統・ドクターネンチによって召喚された怪人である。
「それにしても、こんな弱っちいのが大勢相手では勝てっこないでしょ。アタシたちの圧勝ね」
(この覆面女、見た目は弱そうね…)それがシャネットのダイヤモンド・ヴェールへの第一印象だ。シャネットは身体能力が高く、ダイヤモンド・ヴェールにとっては勝ち目がないと思っているのだ。
「今回は負けられない。お主を倒す自信はある。この調子でいくと阿沙比奈村はアタシたちのもの。シラハタワールドも現実的になる。博士に恩返しできるわ」早くも勝利宣言をしたかのように、長くとがった牙をのぞかせながらニヤリとした。”博士”とはドクターネンチのことだ。また”ある者”とは、やはり彼のことである。シャネットたちHAGE一味はなんとしてもダイヤモンド・ヴェールを倒さなくてはならない。でないと、ドクターネンチからきつい制裁が待っているからだ。ダイヤモンド・ヴェールは、
「オマエの思い通りにさせてなるものか!この村はワタシが守ってみせる!また同じ目に遭わせてやるわ!」
「口だけは達者だな。お主」シャネットは彼女を睨みつけると。猛獣のような牙で威嚇する。
(この歯…牙は獣そのもの…眼光も鋭い。だけどワタシは逃げない!立ち向かってやる!絶対負けない!)ダイヤモンド・ヴェールは闘志を燃やした。その闘志にシャネットは怯えだした。
(いったいどこからオーラが出ているのか…アタシにはわからない…何か不思議な能力でもあるのか)
「ワタシはオマエたちを許さない!愛する村、村人、家族を守る!そして大切な両親の命を奪ったオマエたちを絶対に許さない!」ダイヤモンド・ヴェールの怒りは頂点に達していた。するとシャネットは、
「黙れ!倒せるなら倒してみろ。お主には勝てる自信がある」頭上の角からビームとなってダイヤモンド・ヴェールを襲うと。
「ううっ…」
「アタシをなめてると痛い目に遭うわ。お主がアタシを倒せるのは十年早いわよ」シャネットは攻撃の手を緩めず、ダイヤモンド・ヴェールにとどめを刺そうと腕に噛みつくと、その鋭い牙はまるで五寸釘を刺したかのようだ。彼女の腕は激しく痛み、血が流れていた。傍にいる愛馬・ビアンコが傷口をなめながら相棒の回復を待っている。
「この牙に噛まれたら全身に毒が回る。やがてお主はお陀仏だ」
(つづく)