(これね…それにしてもすごい迫力ね…)リッピィたちはシャトゥ城のリリーホークを遠目で見てもかなりの迫力を感じた。
「ま…待てよ!そこへ行くな!」ハイパーマスララは慌てて止めようとするが、エナジーはかなり減っており、もはや動くことがままなくなった。そして、リッピィとポッペがシャトゥ城に着いた。
「とうとう来たわ!あれを狙えば…」
「プーッ、プップップ!(もう許さない!)」ポッペは怒りが収まらなかった。ほっぺの赤みもさらに増した。
(うっ、しまった!あいつらはリリーホークを狙っている。なんとしても食い止めないと)と、ハイパーマスララに危機感が迫っていた。リッピィたちはその巨大の目玉のような球体をめがけるのだった。
(あの真ん中の黒い部分を狙えばいいのね…)
「ピッピッ、ピーピッピッピー(リッピィ、それは無理かも)」
「やってみないとわからないわ、ポッペ。あなたにも力を貸してほしいの」
「パッ、パッパー(うん、わかった)」
空も飛べるハイパーマスララはエナジーがほとんど切れた状態でシャトゥ城へ向かい、
「こんな弱っちい虫ケラに倒せるもんか。あの爪楊枝みたいな棒で何ができる。必ずお前たちを倒してやる」”リリーホーク”は相変わらず不気味な光を放ち、ハイパーマスララのエナジーを注入している。そして再び回復した。
「このエナジーがある限り倒せないだろう。そのうちお前たちはあの世送りだ」ハイパー・スプラッシュ・バズーカなどの必殺技を繰り出すが、思うように決まらない。完全に回復できていないからだ。リッピィたちは、
(でもやってみないとわからない。お願い…私たちに力を貸して…)
「ワイルドローズ島の人々を助けてください!島に平和を蘇らせてください!」と叫ぶとリッピィの細くて小さな杖から、それまでに発しなかった光がリリーホークの”核”である黒い部分めがけて放たれた。
「おおっ、ヒットしたぞ!これでブラックパワーが消滅だ!」
「やったぜ!」ワイルドローズ島の島民たちはリッピィたちの活躍に期待を寄せていた。
リッピィの杖の先から放たれた強烈な閃光は、リリーホークの”心臓”を直撃した。やがてゴゴゴゴ…と激しい轟音とともにガラガラと一瞬に崩れ落ちた。
「グワアアアァ…!!」ハイパーマスララはまるで打ちのめされたかのように、その場で倒れこんだ。
「あぁ…ワタクシのリリーホークが…ワタクシの宝物が…」と泣き崩れ、その姿は魂を抜かれたかのように生気がなくなっていた。リリーホークは粉々に砕け、ただのガラスの瓦礫となった。
ちょうど、その頃、ミッキー・ネンチは新作を執筆中でもうすぐ完成する。
「いいネタができたぞ。これまでの最高傑作になりそうだ。ベストセラー狙うぞ」
(あとは出版社に原稿を持っていけば…)と胸を膨らませた。
(ちょっと待てよ…マスララさまの様子が気がかりだ)とシャトゥ城に行ってみた。すると、瓦礫の山と化したリリーホークを見て茫然とした。
(なんてことだ…いったい誰の仕業なのか…)彼は声を震わせながら叫んだ。
「マスララさま!どこにいるのですか!」
(ううう…)とうめき声が聞こえてくる。
(あれはもしかして…)そこにはぐったりしたマスララが横たわっていた。
(あれ?元に戻っている…)リリーホークが破壊されると、巨大化しブラック化したハイパーマスララは元のマスララとして、邪悪な魂が抜けたかのように美しい姿に戻った。
「わたくし、悪い夢でも見たのかしら。でも元に戻れてよかったわ…」悪魔に魂を売ったかのような表情は影を潜め、狂気じみた眼は優しさに満ちあふれていた。
「マスララさま、しっかりしてください!」
「…ミッキー、わたくしは大丈夫よ。わたくしの負けだわ。あの虫ケラ、いやリッピィにはお手上げです。おかげで目が覚めたわ」元に戻ったマスララは素直に負けを認め、暗闇に閉ざされていたワイルドローズ島に光が差し込んでいた。人々の顔を覆っていた布も外れて笑顔を見せるようになった。明るい表情からは喜びでいっぱいだ。
「そうだったのですか」
「きっと、この島を助けるために、皆の汚れた心を浄めるために現れたのでしょう」
「そういえば、あれから人がバタバタ倒れる姿は見なくなりましたね。結局はただの風邪だったのだろうか?」
「そうねぇ…島の人たち、布は取っちゃったのかしら」
「とりあえずよかったです。マスララさまが無事で」
「心配してくれてありがとう。おかげで元気になったわ」
「実は新作を書いて、自分でいうのもあれだけど、これまでの自信作だよ。できあがったら、ぜひ読んでください」
「楽しみね。オンサイドさんにもよろしく伝えてくださいね」
「彼も新たな発明に全力を注いでますよ」
「今度は皆を喜ばせるものをよろしくね」
「そうですね。では僕はこれで失礼します」この騒動の”首謀者”である彼はマスララの無事と島に平和を取り戻せたことに喜びを隠しきれなかった。
(それにしても、長き騒ぎになるとは思ってもなかった。いつか皆に謝罪しなくては。だって僕の愛する故郷なんだから)と思ったのだ。
(つづく)