そんな時、ルージュ島の雲行きがだんだん怪しくなってきた。

(やばい!こっちにも来たか!)

「あっちからの雲が風に乗って流れてきた」ワイルドローズ島を覆っている雲は風に流され、みるみる空を暗くした。そのうち激しい雨が降るだろうと島民は慌てだした。リッピィたちが棲むリッピィガーデンにも急いで雨よけの準備を始めた。

(これで大丈夫ね)リッピィたちは一安心。

 そして激しい風と雨が降り、島を襲った。時おり雷も鳴り、あっという間に土砂降りになった。しかし、彼らは落ち着いていた。

「そのうち止むだろう。大したことない」と長老のシャック。

「そうですね。通り雨かもしれません」

 彼らの予想通り雨は数時間で止み、雲が切れ太陽の光がこぼれてきた。

「俺たちの日頃の行いがよかったかもな」

「あっちの島の奴ら、きっと悔しがってるだろうね」

 だが、喜びもつかの間、攻撃の手を緩めないハイパーマスララの魔の手が迫ってきてるのだ。

「な…なんなんだ。この異様な光は!」島民たちはシャトゥ城のリリーホークを眺めながら、

「おい、あれを見ろよ。ますますパワーアップしてるではないか!」巨大化し、パワーアップしたハイパーマスララはルージュ島に向かって空中を飛んでいるのだった。そのスピードはジェット機並みである。

「こっちに来るぞ!早く逃げるんだ!橋が渡れなくなった代わりに空を飛んでるではないか!」

「ものすごい勢いだな。まるでジェット機が飛んでるみたいだ」しかし、彼らはワイルドローズ島の島民と違って特に慌てることがなく冷静だった。

「とにかく”あいつ”を信じることだ」”あいつ”とはリッピィやその仲間だ。そしてハイパーマスララはあっという間にルージュ島に到着。

「まだまだだ…お前たちも闇の世界に閉じ込めてやる」怒りが頂点に達し、カリフラワーのように膨れ上がった頭が弾け黒い煙とともに周りを闇に包んだ。だが、その時だった。

 ”れなくなてえきはろここいるわ。をおがえになんみをめゆになんみ”

 不思議な呪文が聞こえるとともに、周りがパッと明るくなった。

(ま…まさか…これがあの噂の…)”リッピィガーデン”から現れたのは花の精ーリッピィとポッペだった。その光輝く姿を見てハイパーマスララは、

「遂に現れたな。今度はお前たちを木っ端微塵にしてやる」

「そうはさせないわ。あなたを許しません」

「ずいぶん強気な虫ケラね。倒せるものなら倒してみろ。喰らえ、ハイパー・スプラッシュ・バズーカ!!」

(うっ…!)その鋭い眼光から猛烈なシャワーが周りを吹き飛ばし、やがて霧雨となって島民を襲った。空気中に漂う霧のような物体に、

「眼から飛沫ブシャー、ではないか!これはヤバいぞ!」

「そうだ、傘をさして防ごう。これにかかると命にかかわるぞ」

「傘なんて持ってないですよ。どうすれば…」

「傘の代わりになるようなものを考えろ。それからだ」

「おっ、あそこで避難だ。急げ!」彼らが向かったのは島の集会所だ。

(なんとか逃げ切れた…)ホッと一安心したが、ハイパーマスララの不気味な動きに目が離せない。

「あんな薄っぺらい汚らしい布を口に着けたところで何が防げるんだ。眼に入れば大変危険だ。眼が潰れてしまうぞ」

「あっちの島の奴らは鼻と口を覆うことに固執して眼はガードしないもんな。”むき出しの臓器”といわれてるくらいだ。そこをガードしないと意味ないだろ」

「なるほどね…だから何年かかっても状況がよくならないんだ」ワイルドローズ島の島民たちの伝染病が収まらないのは”盲点”に気づいていないからだ、と。

 リッピィたちは力を合わせて攻撃をかわした。

(くううううっ…)ハイパーマスララは悔しがる。

「ちくしょう、逃げやがって。ワタクシの技が効かないとは…」

「ピーピーピー(負けないわ)」ポッペも力をふり絞った。

「わたしに力を与えたまえ。皆の汚れた心を洗いたまえ」リッピィは言葉をつぶやきながら、口紅を長くした細く小さな杖を振りかざすと、杖の先の赤いライトが最大限に光り、

「ま…まぶしい…前が見えない…」ハイパーマスララはあまりのまぶしさに手も足も出なかった。

(そうだわ!シャトゥ城に行ってみましょう。きっと何かがあるに違いないわ)リッピィたちはあのバケモノモニュメントのあるシャトゥ城に向かった。ミーネは、

「確かあのお城には、とてつもない大きなモニュメントがあるそうです。おそらくそれが悪さをしているのではないでしょうか」

 

 

(つづく)