うっすらとした光が花壇を包むと、”フワ~ッ”と人影のようなものが浮かんできた。
(これはもしかして…)ルージュ島の島民はめったに見かけない物体に期待と不安が交錯していた。すると正体を現し、
「こんにちは。驚かせてごめんなさい。私はリッピィ。そしてこちらがポッペ」
(とうとう出ましたか。我々は初めて見たよ)彼らはまさかの妖精出現に一瞬言葉が出なかった。ほとんどの島民がリッピィを見たのが初めてだ。
リッピィにまとわりついてるのが、タンポポの綿毛のような妖精が”ポッペ”。手足はなく、白い小さな羽がちょこんと付いておりタンポポの綿毛のようにフワフワと飛んでいる。ほっぺが赤く、怒ると赤みが増す。話せる言葉は「パピプペポ」のみ。だが、それぞれには感情を持っていて「パ」は喜び「ピ」は悲しみ「プ」は怒り「ペ」はあきらめ「ポ」は驚きを表している。
さらに全身ピンク色の猫、”ミーネ”も現れた。ミーネは”リッピィガーデン”の見張り番でもあり、外部から敵の侵入を防いでいる。長い尻尾を持ち、敵に襲われるとその尻尾を鞭のようにして追い払う。エスパー能力も持ち、リッピィの魔法で言葉も理解できるようになった。そんなリッピィの仲間たちにルージュ島の人々は支えられているのだ。
だが、油断はできない。いずれはワイルドローズ島と同じことになると恐れている。
「しかし、どいつもこいつも相変わらず顔に変な布を着けて気持ち悪いな。それをやったところで伝染病が収まるもんかよ。何いつまでもやってるのか、馬鹿馬鹿しい」
「きっと、その布は奴らにとっては”神の布”なんでしょうね」
「神、と言ってもただの紙か疫病神じゃねーか。ったく変な宗教みたいにハマりやがって」
「疫病収束どころか、かえって広がってるしな。しかも、その布外すことが許されないんだぜ」
「それがかえって黴菌を増やしてるのがわからないのだろうかね」
「ほんと、阿鼻叫喚になってるじゃねーか」
「ザマアミロだぜ」島民は口々にワイルドローズ島の人々を罵った。
”ハイパーマスララ”によってめちゃくちゃにされたワイルドローズ島ではリリーホークが黒光りを見せ、あたりは暗闇に包まれたままだ。あちこちで「助けてくれ」の声が聞こえてくる。
(これからどう生きていくんだ…)助けを求めても誰も助けてくれる人はいない。自力で這い上がるしかないのだろうか、それとも滅亡の道を歩むのだろうか、彼らは途方に暮れていた。そこにミッキー・ネンチとドクター・オンサイドがハイパーマスララの前に現れ、
「なかなかいい感じじゃないですか。その調子でどんどんやっちゃってください。マスララさま、いやハイパーマスララさま」ハイパーマスララは、首を縦に振ってうなずいた。しかし、ブラック・パワー・エナジーは徐々にパワーが薄れてきている。
(あれ?様子がおかしい…エナジー切れなのか?)
「だがリリーホークは完全に輝きを失っていない。そうだ、ヒーナ。リリーホークにエナジーを注入してくれ」
「ワカリマシタ。ゴシュジンサマ」
ミッキーはヒーナを使って、リリーホークにエナジーを注ぎ込むと、ハイパーマスララのパワーはみるみる回復した。
「ありがとう。これでまた戦える。次はルージュ島の奴らを倒す。あそこには虫ケラみたいなのがいるらしい」
「虫ケラ?ひょっとしてあの妖精のことか?」ミッキーはパワーを回復したハイパーマスララを見つめ、
「先生、ご存じなんですか?」とドクター・オンサイドが言うと、
「ええ。知ってますよ。僕は何度か足を運んだが、まだ見たことがないですよ。いつも現れるのではなく、ごくたまにだそうだ。運が悪いのかな、自分」ミッキーは私用でルージュ島を何度か訪れたが、リッピィを見かけたのは一度もなかった。
「そいつはワタクシの敵だ。あんなチョロい虫ケラ、あっという間に叩き潰す」ハイパーマスララはルージュ島侵略に意気込んでおり、
「そうですね。虫ケラなんてチョロいもんさ。向かうところ敵なし、だもの」と。ミッキーはほくそ笑んだ。
(つづく)