(もうダメだ…この島はもう終わりだ…)ワイルドローズ島の人々は絶望感に苛まれていた。ミッキー・ネンチは二ヤリとしながら、
「オンサイドさん、さすがです」と、してやったりといった様子だった。マスララも、
「不思議な能力とはこのことですか」ヒーナの小さいながらもその凄い能力に驚いていた。
”リリーホーク”から放たれたブラックパワーエナジーは島じゅうを包み込み、彼女の体にも異変が起きた。顔の下半分は覆われたままだが、エナジーが注入されると色白だった顔が黒ずみ体も巨大化し、黒いマントを羽織り鋼の鎧を身にまとった。空も飛べるため、空中戦でも力を発揮する。ミッキーはその変わり果てたマスララの姿に笑いが止まらない。
(このエナジーはマスララさまをブラック化させたのだ。それにしてもオンサイドは素晴らしい発明を考えたものだ。僕の助手だった者がここまでやってくれたとは、さすが自慢の友人だ)と、かつての助手に感謝しきりだ。
ブラックパワーエナジーを注入されたマスララは”ハイパーマスララ”に変身したのだ。
「フフフフ…ワタシは今日からハイパーマスララだ。この島の皆どもはワタシの奴隷となるのだ」
ヤーダ三姉妹は、彼女の変わり果てた姿に、まるで悪夢を見てるかのように感じた。
(マスララさま、いったいどうしちゃったの…いつものマスララさまじゃない…)
”ハイパーマスララ”に変身すると、いきなり眼から強烈なビームが島の至るところに発射された。
「ハイパー・スプラッシュ・バズーカ!!」
そのビームはウォーターガンのような猛烈なシャワーを浴びせ、人々を吹き飛ばした。
「ギャアアアアア!!眼が…眼が潰れる…!」やがて霧雨となって空気中に舞いながら人々の体を蝕んでいく。それが眼にかかると最悪失明になる場合があり、また触れたり吸入するとたちまち伝染病を蔓延させる。それには病原体が含まれているからだ。
「どうだ。ハイパー・スプラッシュ・バズーカの威力を思い知ったか」ハイパーマスララは容赦なく攻撃を続ける。
「うおおおおお!!眼から飛沫がああ…飛沫は鼻や口からだけではなかったんだ!」謎の伝染病は当初、眼からも移るという”設定”だったが、いつの間にか”なかったこと”になってたが、どうやら本当のようだ。
「あんなショボい布で鼻や口を覆っても防げねーぞ」
「くそっ、ミッキー・ネンチの野郎、デタラメ流しやがって。こんな薄っぺらい布で伝染病なんてなくなるもんか」
ミッキーはTVなどメディアを利用して”鼻や口を覆えば疫病は防げる”と言っていた。”専門家”とは彼のことだった。実はこの騒動を仕掛けたのも彼やドクター・オンサイドだ。幼馴染で疫病退散を願うマスララに”リリーホーク”を建てる資金集めをするための、いわゆる”茶番劇”であると、この騒動で気づいたのだ。
それでもハイパーマスララの攻撃は続く。
「やばい!逃げろ!それにかかると危険だぞ!!」
「ゴーグルもしないと眼が潰れるどころか、伝染病がかえって悪化するぞ」
「気をつけろ、この飛沫は命にかかわることもある。何としてもかわさないと」
ハイパー・スプラッシュ・バズーカは、眼から発する光線が激しいシャワーのように変化する。それが身体に触れた場合、火傷のように赤く腫れあがり、また鼻や喉に吸入した場合は伝染病を誘発させる大変危険な必殺技である。その威力は想像以上だ。
もう一つの技である”ダーク・カリフラワー・ボム”。これはハイパーマスララの怒りが頂点に達すると、頭がカリフラワーのように膨れあがる。それが弾けると黒い煙とともに一面が暗闇の世界と化する。
そしてとうとうダーク・カリフラワー・ボムが弾け、ワイルドローズ島を暗闇の世界と化し、何も見えなくなった。島民は絶望のどん底に陥った。
(二度とこの状態から抜け出せないのか…周りは何も見えない…ここから這い上がれるのだろうか…)
だが、ハイパーマスララの攻撃は、一向に緩めない。
「ルージュ島を闇の世界にするのだ…」と、不気味な笑みを浮かべた。
(つづく)