シャトゥ城ではマスララが、

「”リリーホーク”のエナジーがなくなってしまったんだわ。もしものことがあったら大変です」と、ヤーダ三姉妹に”リリーホーク”を見守るよう指示した。

「こんな激しい嵐の中ではできません」と長女のナーツが言うと、

「わたくしの言うことがなぜ聞けない?この役立たずが!」と、マスララは鬼の形相で三姉妹をキツく叱った。

「だって私たちではとても敵いません…」

「そういうならこの城から出ていけばいい。”リリーホーク”がどうなってもいいの?」

 キーヨとユーカ、二人の妹は、

「お姉ちゃん、マスララさまのいうことは絶対守らないといけないよ」

 だが、ナーツは、

「フンッ、あんたたちだけで守ってよ。私は嫌だから」

「これはママだと思って守ってよ。だってママの名前が入ってるんだもん」

(この目玉お化けみたいなのがママなの?)と、ナーツは思っていた。

「わかったわよ」三人はもしものことがないように必死で”リリーホーク”を守る。

「じゃあ頑張って守ってね。三人力合わせばできるでしょ」マスララは彼女たちを励ました。雨風がますます激しくなり、冷たい横なぶりの雨が彼女たちの小さな体を容赦なく打つ。それでも力をふりしぼって一生懸命に守る。

「雨、酷くなっちゃった。寒いよ…風邪ひいちゃう」

「もうダメ…」

「どうか止んで…」

 やがて嵐が止み静けさを取り戻し、土砂降りだった雨もすっかり上がって雲の切れ間から青空が見えてきた。マスララは三姉妹を労い、

「よく頑張ったね。見守ってくれてありがとう。あら、びしょ濡れじゃない。早く体を温めないと風邪を引いちゃうよ」と彼女たちを自分の部屋の暖炉に連れていき、暖を取らせた。

(マスララさま、たまには優しいのね…)三人は、普段はめったに見せないマスララの優しさに思わず涙ぐんだ。長女のナーツは、

「マスララさま、もう疲れました。しぬかと思いました」

「”しぬ”なんて大袈裟ね。でもよかったわ。”リリーホーク”が無事で。本当にありがとうね」

 避難していた島民たちは一安心。だが、これで終わりではない。さらなる”悲劇”が待っているのだ。

 

 ミッキー・ネンチは夜の診察を終え、慌ててシャトゥ城へやってきた。

「こんばんは。夜分に失礼いたします。今日も多かったから疲れましたよ」

「嵐の中お疲れ様です。リリーホークはうちの”娘たち”が守ってくれましたよ」

「そうでしたか。あの娘たち、いい仕事をしましたね」”あの娘たち”とは、かつて彼の診療所で働いていたホークの子供たちだ。

「そういえば、ホークさんはミッキーの職場で働いてたそうですね」

「ええ。彼女は子育ての傍らナースとして頑張ってくれてましたよ。確か三人目を身ごもって出産間近で辞めました。とても真面目で機転の利く人でした」ミッキーはかつての仕事仲間について語った。

「”リリーホーク”は輝きを失ったのではない。これからだ」と、彼はバッグからドクター・オンサイドから貰ったヒヨコ型ロボット”ヒーナ”を手のひらに乗せてブラックパワーを注入するのだった。

「オマカセクダサイ、ゴシュジンサマ」ヒーナはリリーホークにブラックパワーエナジーを注ぎ込んだ。

「ワタシノチカラヲアタエマショウ」するとヒーナの小さな体からとてつもないエナジーが巨大なモニュメントに向かって発射された。

「これでよし」ミッキーは満足そうだった。親友のオンサイドが発明したヒーナを操ってエナジーを溜めているのだ。

”リリーホーク”のエナジーが満タンになり、再び輝きを取り戻した。だが、それまでの輝きと違い、不気味で黒ずんでいた。

(な、なんなんだ、これは…)島民たちは”きっと恐ろしいことが起きるに違いない”と感じた。

(我々にできることは…)

 そのときだった。ゴゴゴゴ…と音をたてながらブラックパワーエナジーが放出されたのだ。

 

(つづく)