”リリーホーク”はまるで日の沈まない太陽のように四六時中絶えず輝きを放っている。
(きっとその光がわたくしを変えたのか…)
シャトゥ城の朝はいつも早いが、この日は寝坊ばかりしているヤーダ三姉妹が珍しく早起きをした。
「マスララさま、おはようございます」
だが、マスララは無言で三姉妹の側を通り後ろを振り返ると、殺気づいた眼で彼女たちを睨みつけた。
「マスララさま、どうしちゃったんだろう。様子がおかしいよ」三姉妹は無言で挨拶をしないマスララにおかしいと感じた。
「ところでルージュ島の人たち、ずいぶんのん気ね。まるで他人事みたいに振舞っちゃって。そのうち我々と同じ目に遭うわよ。いずれはわたくしの思い通りになるわ。今に見てらっしゃい」彼女は不気味な笑みを浮かべ、側近であるゲツーマ爺に話した。”爺”とはいえ。二人に血縁関係はない。
「そういえば、誰も顔に布を着けてないですね」と、ゲツーマ爺。
「ま、そのうちバタバタと倒れるわよ。ほっときなさい」マスララはルージュ島を侵略する計画を立てている。ミッキー・ネンチやドクター・オンサイドとともに…。
”リリーホーク”は水晶のようにキラキラと光り輝いている。だが、その輝きはこれまでと違っているように見えた。一見ただのモニュメントだが、恐ろしいパワーを注入されていたのをマスララには知らされていない。知っているのはミッキーとオンサイドだけだ。ミッキーはオンサイドが発明した”ヒーナ”の能力によって”リリーホーク”にブラックパワーエナジーを注入したのだ。また、オンサイドはぬいぐるみ型ロボットを製作中である。それもミッキーの”ペット”としてプレゼントする。さらに鼻と口を覆う布は耳に引っ掛けるタイプに奨めることを島民たちに伝えた。
その一方で島のある村では住民たちの会話が聞こえてくる。彼らは布を巻きつけるものではなく、耳に掛けるタイプのもので鼻と口を覆っていた。
「わがワイルドローズ島は平和で笑いが絶えない陽気な島でした。ところが変な伝染病が流行り出してから一気に様子が変わりました。さらにシャトゥ城にできたおかしなモニュメントができてから悪化しているではありませんか。疫病退散のためだろうけど、これでは疫病神ですよ。それを悪用して我々を洗脳させたかったのでしょう」
「もしかして、そのバケモノみたいなやつってマスララさまが作ったのですか」
「いや、友人を通してです。彼女はただお願いをしただけです」
「やはり彼らは計画通りにしたかったのですか」
「どうやら、その友人、彼女とともに我々を奴隷化するつもりらしいです」
「ふざけるのも大概にしてくれ」
「でもマスララさまは素直でお花を愛でる優しい心を持っています。そのモニュメントも彼女が好きな花から名付けられました。ところが、あることがきっかけで今の姿になってしまったのです」
「”あること”とは、この島で謎の伝染病が流行りだしたこと。だが我々にはその原因がわからない。その病気に罹ったら命を落とすことも多々ある。相次いでバタバタ倒れていくところを担架で運ばれたり、道のあちこちで〇体が転がり、場所によっては〇体の山になっていた。それをTVで流して、ある専門家は”鼻と口を布で覆えば疫病が治まる”といってから、人々は顔に白やらカラフルな布を着けるようになった。その布はどこも手に入ることができなかったが今では普通に手に入るよ」
「TVの力って凄いね。でも、それに騙されてないのかね?」
「さあ…自分でもわからないよ。とにかく収まるまで我慢して着けることだ」
(もしかして、その”専門家”とは…)
(つづく)