そこで思いついたのが、ますくをして自慢のデカ目をアピールすることだ。

 ますくなら自信のない部分もすっぽり隠してくれるから、まさに都合のいいツールだ。

 もちろん仕事に行くのもますくを着けていく。

 (我ながらいいひらめき!これで上司たちの反応が気になる、うふふ…ますく美人って言葉があるくらいだし、”美人”と認められたら鬼に金棒ね)

 椿はウキウキしながら自転車を漕ぎ職場に到着。

 「おはようございます!」

 「おはよう。どうしたんだね、ますくして風邪でも引いたのか?」

 「風邪引いたら仕事休んでますよ」と、彼女は苦笑いした。

 「まさか花粉症?」

 「違うよ」

 「八神さん、ますくしてたら超かわいいですよ!それにしても目力が一層増していますね」と、後輩の香澄が言うと、椿は自慢のデカ目をクリクリさせながら

 「あら、眼が怖いってことかな?だって笑ってないものね。香澄ちゃんはいつもニコニコ愛嬌があってかわいいね」と言い返した。

 「そう言ってもらえるとすごく嬉しいです。八神さんメイクしなくても十分にアピールできてますよ」

 同僚や後輩たちは、彼女の”変身”にびっくりしていた。

 (”ますく美人”って褒め言葉なのだろうか?確かに目元だけ見たら美人かもしれない。でも嬉しいな。ますく様々だよね)

 「そうよね、バリバリに盛ってたらバケモノだから」と、椿は笑ってたが、ますくをしているため”笑顔”は見えるわけがない。

 「ねえ、なんでみんな私をジッと見てるの?羨ましいのかな?」

 彼女は興奮して眼を最大限に見開いた。職場の人たちは、そこから出るオーラを感じているのだろう。

 (何かすごいオーラを放っている…目ん玉落っこちそうで怖いな…目線合わしたくない…しかも血走っているし)

 「八神さん、大丈夫ですか?具合悪ければ休んで病院へ…」

 「大丈夫よ、生まれつきだから。心配しなくてもいいよ」

 「生まれつき大きいなんて羨ましいな。私は小さい方だから。でも、あれだけ大きければ病気と思ってたよ」

 「もう失礼なんだから~」椿は威嚇するかのように同僚たちを見つめていた。

 (あれだけ目ん玉落ちるほどデカけりゃ気持ち悪いよ。病気の他に考えられない)

 彼女の横顔は目玉が突出しているため、全開だと落っこちそうになるほどだ。だが、上司たちは気にいってくれたのか、

 「あれだけインパクトがある目元はめったにいないよ。なんか小悪魔っぽくって。君くらい大きければ表情豊かにしてくれるしよ」

 「そう言ってくれるの嬉しいな。ますます磨きがかかってきます!目元だけで表情が作れるのね!」

 (それにしても八神さん、上司にタメ口はないな…)

 「まさに”目は口ほどに物を言う”だからね。君の魅力を最大限に引き出して頑張ってくれ」

 「はい!ありがとうございます!」と、突出した目玉をクリクリ動かしながら元気よく返事をした。

 (まるで無邪気な子供みたいでかわいいな)上司たちの”お気に入り”に椿はゴキゲンだった。

 

 

  (続く)