しばらくすると、
(あ…あれ?外がなんか騒がしいぞ?のぞいてみよっと)
近所がやたら騒々しいので、紀子は窓を開け、外をのぞくと、
(いったい何事よ。あんなに集まっちゃって。でも私には関係ないわ)
「た、大変だー!」
「おい、なんか臭うぞ!」
あひる荘の周りに、次々と人が集まってきて、
「ここかも知れん。行くぞ!」
彼らが向かっていったのは、あひる荘だった
異臭の元はここかららしい
「どうかしましたか?」
と、管理人の知加子はアパートの玄関にいた
「どうしたもこうしたもないよ、大家さん。他人事じゃないよ。こっちは大迷惑してるんだよ」
「あんた、鼻が悪いのかね?よく呑気でいられるな」
「じゃ、どこなのか行ってみるから」
彼女は部屋を回り、どこが異臭の元かを確かめにいった
「ここだわ!」
彼女が立ち止まったのは一階の奥の部屋で暮らす、母子家庭の別府家ー
母・千鶴子は育児放棄でほとんど家にいることがなく、男遊びに夢中、二人の幼い娘には、ろくに食事を与えず餓死寸前になってるにもかかわらず、女として生きる母親に知加子は怒りがこみ上げてきた
(鍵がかかってる…留守なのかな?)
知加子はピンポーンとインターホンを鳴らした
出てきたのは、長女のすみれ
来年小学校に上がる予定、母にランドセルを買ってもらう約束をしていた
彼女の目は落ちくぼんで、栄養失調のため骨と皮だけとなり、歩くのがやっとでフラフラしながら出てきたのだ
(そんなのでよく生きていられる…それにしても臭い…しかもすごいゴミ…監獄より酷い…)
「あら、こんにちは、すみれちゃん。ママ今日もお出かけ?」
「うん…」
と、元気のない返事が返ってきた
「働いてないでしょ、ママは。なんてだらしない!もしいたら、娘に代わってお仕置きよ!」
「おばちゃん…私とあかね、ずっとご飯食べてない…」
娘二人は、ボロボロになるまで服を着て、何日、いや何ヵ月もお風呂に入らずにいるため、顔を背けるほど臭いがきつく、しかも栄養不足で痩せ細っている
特に妹のあかねは、もうじき2歳になるのに、歩けなくなるほど衰弱しており、紙おむつをつけたまま寝たきりとなっている
近所や住人からは、子供の泣き声で苦情が出ていたが、最近は泣き声が聞かれなくなった
「いつから?」
「わかんない…」
「そうなんだ…帰ってきてほしい?」
「ううん…」
すみれは首を横に振った
「パパはいないの?」
「うん。パパの顔知らない…」
「だったら、ママしか頼りにならないのに」
「……ママは私やあかねが嫌いなんだ…」
「そうかもね。あんな人、ママって呼びたくないのね。ちょっと上がっていい?」
知加子は部屋に上がると、ゴミ屋敷と化していて、足の踏み場もないほど、脱ぎっぱなしの洗濯物、洗っていない食器類やカップ麺お菓子などのゴミ、使用済みの紙おむつが散乱していた
(こんなのしか食べさせてないなんて可哀想…可哀想すぎる…親の顔が見たいよ!)
実は知加子、母・千鶴子を一度も見たことがない
(続く)
(あ…あれ?外がなんか騒がしいぞ?のぞいてみよっと)
近所がやたら騒々しいので、紀子は窓を開け、外をのぞくと、
(いったい何事よ。あんなに集まっちゃって。でも私には関係ないわ)
「た、大変だー!」
「おい、なんか臭うぞ!」
あひる荘の周りに、次々と人が集まってきて、
「ここかも知れん。行くぞ!」
彼らが向かっていったのは、あひる荘だった
異臭の元はここかららしい
「どうかしましたか?」
と、管理人の知加子はアパートの玄関にいた
「どうしたもこうしたもないよ、大家さん。他人事じゃないよ。こっちは大迷惑してるんだよ」
「あんた、鼻が悪いのかね?よく呑気でいられるな」
「じゃ、どこなのか行ってみるから」
彼女は部屋を回り、どこが異臭の元かを確かめにいった
「ここだわ!」
彼女が立ち止まったのは一階の奥の部屋で暮らす、母子家庭の別府家ー
母・千鶴子は育児放棄でほとんど家にいることがなく、男遊びに夢中、二人の幼い娘には、ろくに食事を与えず餓死寸前になってるにもかかわらず、女として生きる母親に知加子は怒りがこみ上げてきた
(鍵がかかってる…留守なのかな?)
知加子はピンポーンとインターホンを鳴らした
出てきたのは、長女のすみれ
来年小学校に上がる予定、母にランドセルを買ってもらう約束をしていた
彼女の目は落ちくぼんで、栄養失調のため骨と皮だけとなり、歩くのがやっとでフラフラしながら出てきたのだ
(そんなのでよく生きていられる…それにしても臭い…しかもすごいゴミ…監獄より酷い…)
「あら、こんにちは、すみれちゃん。ママ今日もお出かけ?」
「うん…」
と、元気のない返事が返ってきた
「働いてないでしょ、ママは。なんてだらしない!もしいたら、娘に代わってお仕置きよ!」
「おばちゃん…私とあかね、ずっとご飯食べてない…」
娘二人は、ボロボロになるまで服を着て、何日、いや何ヵ月もお風呂に入らずにいるため、顔を背けるほど臭いがきつく、しかも栄養不足で痩せ細っている
特に妹のあかねは、もうじき2歳になるのに、歩けなくなるほど衰弱しており、紙おむつをつけたまま寝たきりとなっている
近所や住人からは、子供の泣き声で苦情が出ていたが、最近は泣き声が聞かれなくなった
「いつから?」
「わかんない…」
「そうなんだ…帰ってきてほしい?」
「ううん…」
すみれは首を横に振った
「パパはいないの?」
「うん。パパの顔知らない…」
「だったら、ママしか頼りにならないのに」
「……ママは私やあかねが嫌いなんだ…」
「そうかもね。あんな人、ママって呼びたくないのね。ちょっと上がっていい?」
知加子は部屋に上がると、ゴミ屋敷と化していて、足の踏み場もないほど、脱ぎっぱなしの洗濯物、洗っていない食器類やカップ麺お菓子などのゴミ、使用済みの紙おむつが散乱していた
(こんなのしか食べさせてないなんて可哀想…可哀想すぎる…親の顔が見たいよ!)
実は知加子、母・千鶴子を一度も見たことがない
(続く)