あれから数ヶ月経っても唯助は朝日奈家から姿を消したままだった

やはり"あの世界"でもがいているのだろうか

良枝は久しぶりにそのサイトをのぞいてみた

スイートルランドはもはや"夢の世界"ではなくなっていた

きらびやかなお城や住民の家はすっかり消え、王族や女中・家来ら誰もいなくなり町全体はのどかなお花畑になっていた

(まさか、またファンプーの奴らに侵略されたのか…)

港に目を向けると、ファンプー軍かと思われる一隻の大きな船が無残な姿でさらされていた

船体は跡形もなく朽ちて、積んでいた大砲は錆びていた

帆もボロボロに破れ、豪華客船を思わせた面影はなく、まるで廃屋のようだった

(きっと旦那はここで命を落としたのか…)

最悪な結末を迎えるだけは避けたいが…

(でも旦那さえ生きてくれれば…)

良枝は、夫・唯助はどこかで生きている、必ず朝日奈家に戻ってきてくれることを信じている

だが、"インストール"されたままで、現実には不可能かもしれない

唯助との生活を振りかえてみると、いいことより悪いことが多く、顔を合わせば喧嘩ばかり

自分のどこに不満があるのか、彼に新しい彼女ができればいいのに、とか

思い出してみると、自分は夫に尽くせない思いやりのない嫁であることに気づいたのだ

夫がああいう人だとわかっていながら、言い返さずにじっとこらえていればいいのに、火に油を注いでしまう

それが、いつまで経っても続き、負のスパイラルこら抜け出されずにいる

(いつまでも夫婦関係がこじれたままでいいのだろうか。仲良くなってもすぐに喧嘩になるし…)

かといって、結婚年数が経つほど修復が難しい

彼に、自分にもっと優しくしてほしい、と要求しても、まずは自分から変えよう、とする意識がないとダメなのだろうか

笑いのない家庭なんて息が詰まるだけ

なので良枝は、彼が帰ってきたら、笑顔で迎えようと思った

それが、子供たちのためにもなるのだ




(つづく)