そして、ピンクはアイルからプロポーズをうけた

「私のお姫さま、是非ともお妃になってください。あなたに出会えて私は最高に幸せです」

「アイル様にそう言われてくださるなんて、私も嬉しいです。私でよかったら…」

お城では、盛大なパーティーが開かれることになった

「それでは、パーティーを開きましょう」

お妃のお披露目に、一族は大歓迎の様子だった

「ようこそわがスイートルランド城においでくださり私どもは大変歓迎しております」

パーティーには、住民やメリー、女中・家来たちも加わり、にぎやかになった

「ピンク、いちだんときれいね。アイル様と幸せになるんだよ」

「ありがとう、みんな」

あれほどピンクに嫌がらせをしていた女中仲間も我を忘れるかのように、彼女の幸せを祈った

「お二人の幸せを祝ってカンパーイ!」

アイルはピンクの手をにぎり、一緒に踊りだした

「舞踏会のときより、ずいぶん上手くなりましたね」

二人は音楽に合わせて息の合った踊りを見せた

パーティーは最高潮に達し、いよいよ二人にとって"甘いひととき"を迎えた

アイルはピンクの唇に近づき、女中仲間らは、うらやましそうに二人を見つめていた

(アイル様のキスを奪うなんて!許せないわ!)

それでも二人の幸せを願うかのように祝福した

「おめでとう、アイル様、ピンク!」

「今日は素晴らしい一日でした。この日は私たちにとって一生忘れない日です。大勢の方々に祝福されて感謝の気持ちでいっぱいです」

「どうか、末長くお幸せに!」

メリーは、
「アイル様、ピンクさんを大事にしてあげてくださいね」

「はい。どんなに苦しくても辛くても彼女を幸せにすることを誓います」

「ピンクさん、あなたはスイートルランドのお妃様としてアイル様につくすのですよ」

「はい。立派なお妃になるよう、アイル様につくします」

(疲れた…眠くなっちゃった…)

パーティーが終わり、ピンクは眠くなってアイルにもたれかけた

アイルは彼女を抱きかかえ、自分の部屋に連れていった

(寝顔もかわいいな…)

彼女をベッドに寝かせ、そして彼も同じベッドに入り眠りについた

夜が明け、アイルが先に目が覚めた

(あれ…いない…)

「父上、ピンクさんがいなくなったんです」

「どういうことだ?」

「私が起きたとき、一緒に寝ていた彼女がいなくなったのです」

「すぐに探したまえ。どこかにいるはずだ」

「はい。命がけで彼女を探します」

(あれ…おかしいな…一緒に寝ていたのにいなくなるなんて…)

突然の出来事にスイートルランドの住民に声をかけ、

「どなたかピンクさんを見かけましたか?」

「え?ピンクがいなくなったって。あたしは見なかったね」

メリーも姿をあらわし、

「あ、メリーさん。ピンクさんがいなくなったんです。今、住民あげて探してるのですが…」

「大丈夫です。必ずお城に戻ってきてくれます」

(寝ている間に逃げ出したのか…いったい彼女に何があったのか…)

アイルはこれまでの幸せな生活から一転して落ち込んでいた

町じゅう探してもピンクは見つからない

(もしかして、殺されたんじゃ…)

「メリーさんが見つかりません。もうあきらめなければならないとは…」

「そうなんですか…ピンクさん、いえお妃様は現実の世界に帰ったかもしれません。スイートルランドは仮想世界です。彼女は現実世界から呼び戻されたと思います」

「現実の世界か…」

女中のママレードは、
「彼女、ここに来たばかりの頃は見たことのない貧乏くさい格好してたわ。だって、ここにいる人たちはこんな服装してないもの」

(上下ジャージだったっけ…?)

「いや、ここに来たとたん、女中に変身させられたのかも…」

メリーは、
「彼女は現実世界では満たされてなかったのでしょう。スイートルランドに来て、自分の描いていた夢が叶って、きっと満足して帰ったかもしれません」

アイルも、
「彼女は現実に不満があったから、来られたのですか。ここに来たら楽しかったかと思います。ほんのひとときですが、私も彼女と過ごせたことが一番楽しかったです。彼女には感謝しています」

メリーも、
「心美しいお妃がいなくなったのは残念です。またいつか会える日を心待ちにしています」

空を見渡すと、一本の虹が美しく大きな弧を描いていた

こうしてピンク、いや良枝の「夢の世界・スイートルランド」の生活は終わった




(つづく)