「そうかもね。きれいな格好させられてるけど、ぽっちゃりしてて目がつりあがって鼻が低いところといった特徴があるし。すっぴんだったらもっとひどいし」

「どうやってここに入れたんだ。不思議だな」

「あたしだってわからないよ。入れるわけないじゃん」

子供たちは母・良枝の居場所がわかってきたようだ

(やっぱりお母さんにちがいない…)

しかし、現実世界に戻れるのだろうか

そして、爛は叔母・ほまれに電話して知らせた

「おばちゃん、お母さんが見つかったの」

「ほんと?よかった。で、どこにいるの?」

「それがね…なんか変なサイトに吸い込まれたみたいで…」

「ちょ、ちょっと、頭大丈夫?PCの画面に吸い込まれるわけないじゃない」

「じゃ、見に来てくれますか?本当におがいるんです」

しばらくしてほまれが家に来て、子供たちがいる居間に行きPCを覗いた

(え…本当だ…間違いない…お姫さまになってきれいになってるけど、特徴ははっきり出ている…)

「ね、お母さんでしょ」

ほまれは画面に釘付けになったまま動かなくなっていた

(どうやって入ったのよ…)

「ねー、おばちゃん、どうしたの?」

「あ、何でもない。なんでお母さんいるのがわかったの?」

「ネットがしたくなって、変わったサイトがあるんだな、と覗いてみたら…」

「偶然だったのね。でも、もうここには戻ってこれないでしょ?」

「それが問題なんだ」

マロンもやってきて、飼い主の居場所がわかったとたん、キャンキャン興奮し始めた

(マロン、飼い主見つかって喜んでいるんだな…)

「あら、マロンちゃん。いい子にしてたね~ほら、お母さんよ」

(あとはお父さんか…)

「お母さん、ネット依存なんだってね。兄さんが言ってたわ」

「うん。母ちゃん人付き合い苦手だから、しょっちゅうやってる。でも、"依存"じゃないと思う」

「お父さん、"依存"の意味がよくわかってないと思うよ。お母さん、家事ほったらかしにしてまで一日中PCにかじりついてるわけじゃないのに」

「それで、母ちゃん頭にきてたんだ」

「とりあえず、お母さんが見つかってよかった。あとはお父さんね」

「オヤジはどうでもいいよ。あんな変態、いても迷惑だから」

「兄さん、私と話してても下ネタとか奥さんへの愚痴ばかりだもん。そうとうたまってるのかしらね」

「AVばっかり観てるよ。仕事休みとか母ちゃんが寝てからとか。いい年こいてバカじゃない。AV脳になっちゃってるからな」

「男はね、年をとってもあちらは衰えないって。年は関係ないよ。年の差カップル見てたらそう思ってくる」

「あたしはやだな。年が離れすぎてるのも。親がいい例だわ。フィーリングが合わないっていうか、話が食い違ってしょっちゅういがみ合ってるし。絶対イヤ」

「男がうんと年上なら優しいはずなんだけどな。お姫さまみたいに守ってあげたくなるじゃないの?」

「ぜーんぜん。お父さんったら、完全に俺様タイプなんだもん。お母さんも口では負けてないし」

「兄さん、きっと寂しいのよ。こう見えても心はナイーブなのよ。誰かに癒してほしかったのかも」

「かまってちゃんなんだ、オヤジ」

「お母さんとどちらかというと自己中だからね。自分の考えを曲げたくないから、つい口答えしちゃうのよね。でもすぐに仲直りしてまた繰り返して」

「だから、いつまでたっても夫婦仲悪いんだ。修復は難しいかも」

「おばちゃんの旦那さん、優しいからうらやましい。あたしそういう人と結婚したい」

「あははは…そう見えても主人の若い頃は女遊び激しかったし、すぐに手が出るタイプだったよ。私がみっちりしつけておいたから」

「おばちゃん舵取り上手いんだ。旦那さんちゃんと操縦できてるなんて、すごい。ウチの親も見習ってほしいよ」

「無理なんじゃない?生まれもっての性格ってなかなか直らないもの。あ、もうすぐ主人が残業から帰ってくるから、私も帰らないと。また来るね。バイバイ」

「おばちゃんありがとう。おやすみなさい」

(これで一件落着ね…)




(つづく)