「あー、この前はお母さんがいなくなったんだね。見つかったの?」
「まだなんです。全然連絡つかなくて…」
「きっといなくなったから、寂しい思いしてたんじゃないのか?」
「ううん、そんなことはないと思います。両親しょっちゅういがみ合いいていましたから」
「ケンカ相手がいないと、退屈なんだろな。お父さんの楽しみってないのかね?」
「たまに女の人の裸見てデレデレウハウハしてるの見たことある」
「スケベだな。彼女欲しかったんじゃないのか?」
「そうかも。でも、お父さんモテないから。初めてのデートはお母さんだったもの」
「新しいお母さん来てほしいだろ?」
「うん。いないと困る。私がお母さんの代わりになれないし…」
「でも、お嬢さん、中学生だっけ?少しは手伝いできるんじゃないか?」
「たまになら…私、足引っ張っちゃうから…」
「今からやっておかないとヨメに行けなくなるぞ」
「はい。私お嫁に行きたいから、頑張ります」
「捜索願なんだけど、お父さん特徴は?」
「背は低いです。160あるかないか。いつも作業服着てます。昨日出ていった時も作業服着ていました。無精ひげ生やしていて、真っ黒に日焼けして頭ははげ上がってます」
「ガテン系の仕事なんだね」
「土木作業員です」
「ということは、昨日仕事に行ってからそのまま帰ってこなかった、ってことかね?」
「はい」
「お父さん早く見つかるといいな。じゃ、捜索願出しとくね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
(これからあたしたちだけで生活していくのね・・・わからないことがあれば、ほまれおばちゃんに聞こう)
爛は、叔母のほまれに電話をして、
「もしもし、おばちゃん?さっきね、警察に行って捜索願出してきたの」
「そうなんだ。パパもママもいないのなら、お子ちゃまだけになるのね」
「うん。寂しいけどなんとかなる」
「もし、わからないことがあったら、私に言ってね」
「ありがとう。おばちゃん」
そして、帰宅―
(兄ちゃんたちまだ帰ってきてない・・・晩ごはん何にしようか・・・冷蔵庫見てみよっ)
冷蔵庫を開けてみると、賞味期限が切れた食品がいたるところにあった
(食べられないのなら、なんで買ってくるの?捨てちゃえばいいのに・・・何を食べろ、っていうの・・・?)
それらの他に、缶ビールなどの飲み物が入っていた
(困った・・・買ってくるにしても、お金がない・・・そうだ!たか兄、バイトのお金があるから、買ってきてもらおうかな)
彼女は、兄・天に夕飯の材料を買ってもらうよう頼んだ
「あのね、晩ごはん作ろうと冷蔵庫開けたんだけど、何もないのよ。適当に買ってきて」
「何もないって、ウソだろ?まだいっぱいあったぞ」
「それがね、賞味期限が過ぎてるのばっかりなのよ」
「なんでいつまで入れてるんだよ。なんで食べなかったんだ」
「だって、お父さんの好物ばかりあるんだもん。あたしが食べられるものなんてないし」
「ったく、ワガママな妹だな。誰かに似てるよ」
「誰かは余計ですっ!マロンだって食べないよ。たか兄の好物でいいよ」
「うん、わかった。真な部活で遅くなるんだろ?」
「まこ兄、今日は部活ないって。ありがとう」
夕飯の材料を天がバイト帰りに買ってきてもらうことで、食事に悩まなくてすむようになった
(困ったときの兄頼み、ってことかな。これからは兄妹助け合わないと)
(つづく)