一方、”スイートルランド”にいる良枝は、すっかりその世界にとけ込んでいた


(これでお城が支配できるのね…アイル様は私のものよ…)


すると、メリーがやってきて、


「ピンクさん、スイートルランドを守ってくれるのはあなたしかいません。是非ともアイル様のお妃様になってもらいたいのです」


(ま…マジで…?アイル様と結婚?)


アイルのお妃になれるのを楽しみにしていたピンクの胸が高まった


「本当ですか、メリーさん。スイートルランドを支配する権利を持ったのでとても嬉しいです。でも、私にはこの国を守っていけるのか、不安です」


「それなら心配はいりません。何かあればわたしを呼んでください。相談にのってあげます」


「私のようなブサイクにお妃は似合わないです。私以外にふさわしい人はたくさんいます。だけど、私はそれが夢だったので…」


「大丈夫です。わたしにおまかせください」


メリーは再びピンクにおまじないをかけた


「アイル様のお気に入りのお妃にな~れ、うころうころ…それっ」


(わぁっ…!)


ピンクはきらびやかなドレスを身にまとい、アイル好みの”お姫様”に変身した


「もうあなたは女中ではありません。これならアイル様もきっと喜んでくれるでしょう。ピンクさんに幸せになってもらいたいのです」


「メリーさん、私、お礼をさせてください」


「お礼なんて…いいですよ。あなたがお妃様になって幸せになることがわたしへのお礼です」


「ありがとうございます。メリーさんは私にとっては大切な恩人であり、心の支えになっています。あなたがいなければ、私は女中仲間からいじめ続けられ地獄を味わう日々を送っています」


ピンクは感激のあまり、涙がこみ上げてきた


「ピンクさん、これからもあなたの守り神として、ずっとそばにいます」


と、その時だった


城に向かって歩いている見覚えのない人影を見つけた


(誰?不審者?)


現われたのは、うす汚い格好をした、中年のメタボ男だった


「誰です、あなたは?見かけない人ですね」メリーが言うと、


「へっへっへっ…俺様はあんたに用はない。この城にはお姫様がいるだろ?そいつに用があるんだ」


男はドカドカと重い足どりで城の中へ入っていこうとすると、女中たちが待ち伏せをして、


「なによ、ここはあんたの来るところじゃないわ」


「そうよ、そうよ。出てってよ」


「お城を汚すことをするなんて許さないわよ」


「勝手に忍び込むなんて、汚い奴!」


男を追い出そうと、彼女たちは口々に罵った


「ええい、やかましい奴らだ!どけどけ、ブタども!!」


(ほほーっ、これが、王子の住み家か。けっ、こんな家に住みやがって)


女中たちは男に中に入らせまいと、とうせんぼをしていた


「何をしやがる…うわっ…!」


「この粗大ゴミははるか向こうの山へほうり投げましょう!それっ!」


「そうはさせるか!」


男も必死で彼女たちの攻勢を止めようとしたが、さすがに一人では止めれなかった


(うわぁぁぁぁぁああああ、やめてくれ~!)


女中たちはめいっぱい勢いをつけて男を向こう山へ放り投げた


「これでスッキリしたわ!」


ピンクは、


「ありがとう。助かりました」と、彼女たちに感謝の言葉を伝えた


(そういえば、あの人どこかで見たような…)






(つづく)