女中に戻ったピンクは、女中仲間から
「舞踏会、この格好で出ちゃったの~」
「おまけに晩餐会も呼ばれちゃって~」
「アイル様可哀想~スイートルランドの恥さらしね」
「お城中の笑いものよね~あー、ヤダヤダ」と、口々にからかわれていた
「私は女中のままでいたくないの。いつかはお妃様になってこのスイートルランドを支配したい!」
ピンクは自分の想いをきっぱり言い切った
「フンッ、笑わせないでよ。バカじゃん!」
「まあ~、支配したいって大それたこと言っちゃって。何寝ぼけてるの」
「あんたには無理無理。女中が姫やらお妃になる自体、ありえないもの」
「じゃぁ、私と勝負しませんか?このバトルに勝ったら、お城を支配する権利を与えてあげるわ。もし、私が負けたらあきらめる」
「な、なによ。バトルって。取っ組み合いのケンカでも?」
「ううん、ゲームよ」
ピンクは大きなテーブルにまんじゅうが一個ずつ乗った皿をずらっと並べていった
(何するつもりかしら…)と、仲間たちは彼女の行動を不思議がっていた
「ざっと30個はあるね。その中に当たりくじが一つ入ってるの。それを食べた人がお城を支配する権利があるから」
「30分の1か…確率めっちゃ悪いじゃん!でも、毒は入ってないよね?」
「あんたって、面白いこと思いつくね」
女中たちは代わる代わるまんじゅうをパクついた
「次はママレードね」
「うわっ…まだ誰も当たり出てないんだ。当たったらどうしよう…」
ママレードがパクつくと、
「何、これ、ただのまんじゅうじゃない!」
「ちょ、ちょっと、びっくりしたよ~。当たったかと思ったよ」
「くやしい~」
「今度は私の番ね」ピンクはまんじゅうを食べた
「あま~い。私、甘いの苦手。あー、残念」
やっと一巡したが、誰も当てていない
まんじゅうはまだ半分残っている
確率は15分の1に変わったとはいえ、やはり厳しい
女中は15人いる
そのうちの一人がお城を支配する権利が与えられるのだ
「次は私ね」と、仲間で一番若いミントがパクついた
「ダメだった。クッソ~」と悔しがっていた
他の連中も代わる代わる食べていく
だが、まだ誰も当てていない
いよいよピンク、二度目の出番
(よ~し、当ててやる)と、その時だった
「やった~!私が当たった~!」と、彼女は当たりくじを皆の前に見せた
「お城を支配できるんだわ…そしてアイル様とまた会える…!」と、上機嫌だった
「なんてあんたは運のいい人なの。舞踏会にせよ、アイル様を一人占めするなんて」
「ほんと、ゴミに支配させたら、スイートルランドは滅びるわ」
「ゴミは海に投げ込むのが一番よ」
仲間たちは、ピンクを妬むあまり、またしても彼女にキツい言葉を浴びせた
そして、アイル様にまた会えると、ピンクはワクワクしていた
(この世界が現実ならば、一生クソ旦那の顔見なくてすむわ。あー、スッキリする~)
(つづく)