そして、月日は流れ、良枝が”スイートルランド”に飛びこんでから数ヶ月が経った


この日は日曜日で、唯助は仕事が休みで家にいる


彼は、普段から満たされていない気持ちを発散すべく、自分の部屋に行きAVライブラリーからお気に入りを観ていた


「”サムライ・ロンリー・ブルー”か…。これ、何回観ても飽きないな~。元岡ナツキちゃんのおっぱいかじりつきたいな~」


彼は、AV女優・元岡ナツキの大ファンだ


彼女の出演している”サムライ・ロンリー・ブルー”は特にお気に入りの作品だ


もちろん、彼女の出演作品はすべて揃っている


「いいな~。ナツキちゃん見ながら酒飲んだらうめーよな。彼女が酒のつまみになるし。ヨメとは屁にならん」


「お父さん何してるの」と、突然子供たちが唯助の部屋に侵入してきた


「やだな~、オヤジ。趣味悪いよ。これだから、母ちゃんに逃げられるんだ」


「お、お前ら、ノックもせずに勝手に入ってくんじゃねーよ」


「だって、お父さんったら若い女の子の裸見てデレデレしちゃって気持ち悪いよ」


「しっかし何だよ、オヤジは。エロビデオばっか集めてさ。いい年して恥ずかしくないのかよ」


「お前らも俺くらいの年にならないとわからんよ。年取れば取るほど、若い子が好きになってくるんだ。ほら、芸能界だって年の差カップル流行ってるじゃん」


「だから、お父さんピンピンしてるんだ~。きゃぁ~」爛は父をからかうかのように高笑いした


「あとはな、中国の女の子もいいな。スタイル良くて脚も長くて、デブもいねーだろ。整形ほとんどしてないのに美人揃いだからな。俺、中国人のガールフレンドいるんだぜ。ピッチピチの若い娘な。行きつけの飲み屋で知り合ったんだ。彼女、そこでバイトしてたんよ。カワイイな~」


「だったら、その娘と結婚すればよかったのに。でも、ママはパパに女友達がいるのはわかってるの?」


「わかんないや。もし、わかったのならとっくに別れさせてるよ」


「オヤジ、いい加減にしろよ。のんきにクソビデオ観てる場合じゃないだろ?母ちゃん心配してないのかよ。もし首吊ってたらどうするんだよ」


「それはないと思うな、たぶん」


「母ちゃんじゃなく、オヤジがいなくなればいいんだ」


「そうだ、そうだ」


「そんなに若い娘が好きなら、キャバかパブに行けばいいじゃん」


「フンッ、こんなご時世、キャバ通いする金なんてないよ。だからDVD観て我慢してるんだよ」


唯助は満たされていない”欲”をAV観て解消するしかないと思っている


しかし、それだけでは満足できていないのだ


良枝とは”やらなくなって”かれこれ十年になる


(あんなカス女のアレなんて見たくねーし、キモイだけだぜ。俺がもっと金稼いだら、うんと遊びたいし)


彼の夢は、美女に囲まれる、いわばハーレムのような生活をすることだ


(あ~あ、こうして一日を過ごすことができれば、俺の人生はバラ色なのにな…)


もっとも、彼の場合は”夢”で終わりそうだが…


「だから、お父さんはそのイライラから、お母さんに八つ当たりしてるんじゃない?DVD観るだけじゃ解消できないでしょ、サイテーね」


「じゃ、爛、お前キャバ嬢になれよ。なかなかのナイスバディだしな」


「えっ?!あたしはシンガーソングライターになりたいのに。それにナイスバディっていうほどでもないよ」


「たいして金儲けにならんだろ、それ。キャバ嬢なら、ガッツリ金儲けできるぜ」


「絶対にイヤです!お父さんの言いなりはイヤですから!あたしまだ中学生よ」


「それは残念だな。お前が大人になってからの話だ。今からやってもおかしくないがな」


(たとえ冗談でも、キャバ嬢になれって言われても、この年で無理に決まってるじゃん)







(つづく)