※この物語はフィクションです
とある住宅街の一角に、しょっちゅう夫婦喧嘩をしている夫婦仲の悪い家族がいる
結婚20年の朝日奈唯助と、妻・良枝の間には、三人の子供と愛犬・マロンの5人+1匹という家族だ
近所に住む人の話によれば、仲の良い夫婦らしい
だが、一度口を開いたら口論に発展してしまうほど仲が悪い
口論の理由は、ささいなことがほとんどである
なぜ、喧嘩になるまで発展してしまうのか
土木会社に勤める夫・唯助は、普段は良き夫、父親なのに、話し方がいつも喧嘩腰で命令口調になる
普通に話していても、"喧嘩売ってるのか?"と思うほどだ
特に良枝には、きつくなる
そのため、彼女もきつく言い返すので、さらに酷くなる
近所からは、"喧嘩するほど仲がいい、っていうじゃない"といわれるが、彼女はその言葉が大嫌いである
(冗談じゃない!私ら、全然仲良くない。あ~あ、なんであんながさつな男と結婚しちゃったんだろ。よく20年も辛抱できたわ)
夫に浮気なり不倫してくれればありがたいのだが、その性格ゆえ、寄りつく女なんてあるはずがない
しかも、チビ・ハゲ・メタボという"女が嫌がる要素"を持っているだけに、現実には不可能かもしれない
一方、良枝も容姿にコンプレックスがあり、子供の頃、いじめられた経験がある
そのため、恋愛には疎く唯助と出会うまでは、男性とは無縁であった
二人の出会いは、20年前にさかのぼる
唯助はすでに30代半ばとなり、両親は長男である彼に見合い話をもちかけた
その頃は、もちろんインターネットによるお見合いはなく、近所や親類から話が入ってくるのを待つだけだった
そんなある日、唯助に見合い話が入ってきた
親戚、彼からみれば、叔母にあたる母の妹から、
"友達の娘さんに、看護師なんだけど、早く結婚したいって。彼女、唯助君より一回り年下よ"
その友達の娘が良枝だ
母の妹、すなわち叔母は、友人と会い、さっそく良枝を唯助に会わせるため、朝日奈家に連れてきた
唯助にとっては願ってもいなかったお見合いに、トントンと話が進んでいった
(これはいい感じ…)と、母と叔母は会わせて正解だったと思っていた
やがた、二人は趣味の話で盛り上がり、意気投合して、ついに婚約にいたった
そして、大勢の親族や友人に祝福され、結婚
新婚旅行は4泊5日の温泉巡りやテーマパークでの"甘い生活"を満喫した
だが、新婚旅行から帰ってくると、良枝に"地獄"が待っていた
唯助の両親と同居が始まった
彼は長男で跡取りのため、同居は当たり前と思っていた
結婚してからも、看護師として病院で働き、毎月10万を家に入れていた
厳格な舅と、口達者な姑にいびられ続け
気の強い彼女はさすがに口答えすらできなくひたすら耐えていた
やがて最初の子供を妊娠し、出産直前で勤めていた病院を辞めた
その後、二人、三人と子宝に恵まれ、幸せ円満になるはずだが、かえって夫婦関係は悪くなっていき、二人との溝は段々深くなっていた
(今さら、それが埋まるどころか、底なしになってしまうのかも…)
さらに悲劇が襲った
頑固な舅が脳梗塞で倒れ、寝たきりになり、世話は良枝がしていた
さすがに看護師をしていただけに苦にはならなかったが、今度は姑が脚を悪くして車イスでの生活になった
良枝は二人も病人を抱え、一人で面倒をみていた
しかし、唯助は感謝の言葉すらなく、"ヨメが面倒見るのが当たり前"という考えを持った人なので、彼女はブチ切れそうになった
(自分の親なのに、一切面倒見ないなんてどういうつもりなの?親の愛情であんたを育ててもらったのでしょ?それを皆私に押しつけて、たいがいにしてよ!)
義理の両親の介護に明け暮れ、身も心もヘトヘトになっていた良枝にとって、子供たちが何よりも救いだ
(子供たちのおかげで、私は助けられている。もしいなかったら、と思うと…生きる気力なくしてしまう)
我が子のおかげで、何とか夫婦生活を続けられているが、夫婦関係は日ごとに悪くなっている
夫は、口を開けば威圧的で命令口調、本人はそのつもりで話してなくても彼女にはそう聞こえてくるのだ
(なによ、いつも怒ってばっかりね、あの人。何が気にいらないのかしら?)
(つづく)
とある住宅街の一角に、しょっちゅう夫婦喧嘩をしている夫婦仲の悪い家族がいる
結婚20年の朝日奈唯助と、妻・良枝の間には、三人の子供と愛犬・マロンの5人+1匹という家族だ
近所に住む人の話によれば、仲の良い夫婦らしい
だが、一度口を開いたら口論に発展してしまうほど仲が悪い
口論の理由は、ささいなことがほとんどである
なぜ、喧嘩になるまで発展してしまうのか
土木会社に勤める夫・唯助は、普段は良き夫、父親なのに、話し方がいつも喧嘩腰で命令口調になる
普通に話していても、"喧嘩売ってるのか?"と思うほどだ
特に良枝には、きつくなる
そのため、彼女もきつく言い返すので、さらに酷くなる
近所からは、"喧嘩するほど仲がいい、っていうじゃない"といわれるが、彼女はその言葉が大嫌いである
(冗談じゃない!私ら、全然仲良くない。あ~あ、なんであんながさつな男と結婚しちゃったんだろ。よく20年も辛抱できたわ)
夫に浮気なり不倫してくれればありがたいのだが、その性格ゆえ、寄りつく女なんてあるはずがない
しかも、チビ・ハゲ・メタボという"女が嫌がる要素"を持っているだけに、現実には不可能かもしれない
一方、良枝も容姿にコンプレックスがあり、子供の頃、いじめられた経験がある
そのため、恋愛には疎く唯助と出会うまでは、男性とは無縁であった
二人の出会いは、20年前にさかのぼる
唯助はすでに30代半ばとなり、両親は長男である彼に見合い話をもちかけた
その頃は、もちろんインターネットによるお見合いはなく、近所や親類から話が入ってくるのを待つだけだった
そんなある日、唯助に見合い話が入ってきた
親戚、彼からみれば、叔母にあたる母の妹から、
"友達の娘さんに、看護師なんだけど、早く結婚したいって。彼女、唯助君より一回り年下よ"
その友達の娘が良枝だ
母の妹、すなわち叔母は、友人と会い、さっそく良枝を唯助に会わせるため、朝日奈家に連れてきた
唯助にとっては願ってもいなかったお見合いに、トントンと話が進んでいった
(これはいい感じ…)と、母と叔母は会わせて正解だったと思っていた
やがた、二人は趣味の話で盛り上がり、意気投合して、ついに婚約にいたった
そして、大勢の親族や友人に祝福され、結婚
新婚旅行は4泊5日の温泉巡りやテーマパークでの"甘い生活"を満喫した
だが、新婚旅行から帰ってくると、良枝に"地獄"が待っていた
唯助の両親と同居が始まった
彼は長男で跡取りのため、同居は当たり前と思っていた
結婚してからも、看護師として病院で働き、毎月10万を家に入れていた
厳格な舅と、口達者な姑にいびられ続け
気の強い彼女はさすがに口答えすらできなくひたすら耐えていた
やがて最初の子供を妊娠し、出産直前で勤めていた病院を辞めた
その後、二人、三人と子宝に恵まれ、幸せ円満になるはずだが、かえって夫婦関係は悪くなっていき、二人との溝は段々深くなっていた
(今さら、それが埋まるどころか、底なしになってしまうのかも…)
さらに悲劇が襲った
頑固な舅が脳梗塞で倒れ、寝たきりになり、世話は良枝がしていた
さすがに看護師をしていただけに苦にはならなかったが、今度は姑が脚を悪くして車イスでの生活になった
良枝は二人も病人を抱え、一人で面倒をみていた
しかし、唯助は感謝の言葉すらなく、"ヨメが面倒見るのが当たり前"という考えを持った人なので、彼女はブチ切れそうになった
(自分の親なのに、一切面倒見ないなんてどういうつもりなの?親の愛情であんたを育ててもらったのでしょ?それを皆私に押しつけて、たいがいにしてよ!)
義理の両親の介護に明け暮れ、身も心もヘトヘトになっていた良枝にとって、子供たちが何よりも救いだ
(子供たちのおかげで、私は助けられている。もしいなかったら、と思うと…生きる気力なくしてしまう)
我が子のおかげで、何とか夫婦生活を続けられているが、夫婦関係は日ごとに悪くなっている
夫は、口を開けば威圧的で命令口調、本人はそのつもりで話してなくても彼女にはそう聞こえてくるのだ
(なによ、いつも怒ってばっかりね、あの人。何が気にいらないのかしら?)
(つづく)