千聡に新しい命が授かることができ、百代も大喜びだ
(本当に奇跡だ。まさに夢のよう…よかったね)
周吾も初めてパパになれるという喜びでいっぱいだった
一度、いや一生あきらめていた我が子の誕生を心待ちにしているのであった
だが、心配や不安もある
母体の急変や、五体満足で生まれるだろうか
とにかく、母子とも健康であるよう、祈るばかりだ
(私も子供欲しくなったな)
百代は用事があって出かけることにした
もちろん就活もだが、婚活もありだったりして
街中をブラブラ歩いていると、大きな書店を発見
(ちょっと寄ってみようか…そういえば周吾が”姉さん、表紙になってる”って言ってたな)
「えっーと、これだっけ?私が表紙になってるのは…」
百代は、自分が表紙になっているsmile me12月号を手にし、ページをめくってみた
「わ…私がいっぱい載ってる~」
彼女は驚いた
「でも、評判はどうなのかな。私みたいなド素人が、モデルしていても冷たい反応しかないのかなと」と、言いつつも、とりあえず買ってみた
書店から出たとき、
「モモちゃんじゃないですか!!」
「えっ?松倉さんお久しぶりです」
「聞いてください!今月号の表紙が大反響です。編集部に”このモデルさん、カッコいい””ベテラン顔負けでカッコよくポーズを決めている””この人は誰ですか?”って、読者からの問い合わせが殺到したのですよ。編集部から、”是非とも専属のモデルになってください”と…」
「本当ですか!今ね、私お仕事探してたところなんです。また声をかけて下さるなんて、嬉しいです。即OKします!ところで、松倉さん、新しい事務所立ち上げたのですか?」
「まだ始めたばかりなんですけど、軌道に乗っていければね。さっそく明日から撮影に入るから、あれ?あれから痩せたんじゃない?」
「気疲れよ。ちょっと色々あってね。食欲もあまりなかったから…」
(お父さんもそう言ってたよね…でも、私は風邪一つひかず元気なのに)
「じゃぁ、明日待っているから、撮影現場に間に合うよう、来てくださいね!」
「わかりました!」
(やったぁ~またモデルができる!私にはこれしかないんだ!)
帰宅して、両親に、
「ねー聞いて、私、またモデルすることになったの」
「それはよかったな。やっぱお前にはモデル向きだよ」
「えへへ…そうよね。さっそく明日撮影なの」
「でも、もう少しふっくらした方がいいぞ。ガリガリじゃサマにならないからな」
「えーっ?!今のままでいいと思うな。いったん体重が増えるとまたたく間にブクブクいっちゃうもの」
「ま、好きにしろ。自分の進むべき道を外さずにいくんだぞ」
「ありがとう、お父さん」
「モモよ、よかったじゃない。頑張るのよ」
「今まで親に迷惑かけてきた分、しっかり親考行しますからね。いつか温泉旅行に連れてってあげるからね。ずっと行きたいって、言ってたでしょ」
「それは楽しみね。絶対に叶えてね」
(つづく)