翌日、百代は他のペットたちをおとなしく留守番をさせ、もみじを抱いていったん自宅に帰り、両親にお墓を作ってくれないか、とお願いした
(冷たくなってる…)
「たとえ、息子のペットとはいえ、墓なんぞ作れない。自分たちで作ればいいじゃないか」と快諾してくれなかった
「ゴミの日に一緒に出せばいいじゃないか」と、父・行男
「どうすればいいの?このままゴミにしてしまうなんて絶対イヤですから!」
両親の態度に、百代は怒りがこみあげてきた
「愛情もって育ててきた動物をゴミ扱いにするのがさっぱりわからないわ!」
(動物霊園がこの辺にあればいいど…)
すると、行男は、
「庭の隅っこに穴を掘って作ってあげたらどうか。それでいいだろ?」
「ありがとう」
(簡単でいいけど、ないよりはマシか)
百代は庭に行き、そこに穴を掘って好物であるかつお節とおもちゃと一緒に葬った
その上に”もみじの墓”と書いた立札を立て、線香をあげた
(どうか、天国で安らかに…)
両親がやってきて、
「よかったな。なかなか立派な墓だな。きっと喜んでるよ」と、満足そうだった
そして、彼女は周吾のマンションに戻った
「あら、周、帰ってたの?お疲れ様。お墓なら、実家の庭に作っておいたから」
「ありがとう。よかった、もみじも喜んでるよ」
「ちいちゃんあれから様子あった?」
「病院から電話があったけど、ヨメの退院日決まったんだ」
「本当?よかったぁ~。いつになったの」
「10日後だって」
「あれから順調に回復してるし、なにしろ、発見が早かったからね。再発も転移も今のところなくなったって。退院前日に検査があるから、その結果しだいだけどね」
「でも、油断できないよね。いつ再発するかわからないし、新たにガンが見つかったりする場合もあるから」
「ま、大丈夫だろ」
「そうよね。喜ばなくっちゃ」
10日後、いよいよ千聡が退院の日を迎えた
「ただいま~。久しぶりの我が家は最高~」
「あら、ちいちゃん、おかえり~」
「犬たちもおりこうにしてたね~。お義姉さん面倒見るのって大変だったでしょ」
「ごめんね…もみじ亡くなっちゃたの。何もしてあげられなくて…」
「22歳だっけ?よくここまで長生きできたよね。お義姉さん、ありがとう」
「この間までは元気だったのに、急に具合が悪くなって…でも、お墓はちゃんと作っておいたから、たまには墓参りしてあげてね」
「うん。いつか行くからね。毎日世話大変なのに、ご苦労様。あれ?前よりおとなしくなったような…お義姉さんのしつけがよかったのかなぁ…」
「そういわれると、嬉しいな。やっということを聞いてくれるようになった」
「ところで、”姉さんが引き取る”って、周ちゃんが言ってたけど、実家では飼えないでしょ?」
「両親は動物はダメなのに、どうして”私が引き取って飼う”って言っ茶ったんだろ…でも、ここでずっと飼うことができないでしょ?もし、ここを追われたら、親と同居するつもり?」
「わからない。たぶん考えてないかも。ウチとこは次男だし、お義兄さんとこはどうなんだろ…」
「紀夫んとこは、出張が多くて奥さんも勤めてるから留守がちだし、マイホームも建てたもの。今さら戻る気はないわ」
「だから、行かず後家の私が、親の面倒見なきゃならないのか…親が寝たきりになったらどうするやら…」
と、百代はため息まじりに話した
「お義兄さんが親を引き取ることはできないの?長男だからって、無責任じゃないかな」
「でもね、ちいちゃん、そんな考え方古くない?今は、長男が親を見なければならない時代じゃなくなったの。跡取りだからって、甲斐性のない人は見てもらわなくても結構。娘だろうが、誰でもいいと思うな」
「いわゆるマスオさんみたいなものね」
二人はそれぞれの家庭が抱えている問題を、どうすれば解決できるか話し合っていた
「ペットのことで、私が引き取ることになったんだけど、問題は親なのね。さっきも言ったけど、動物が苦手だから飼えないの。だから、見つからないように飼うにはどうすればいいか、それが悩みなの。ペット用の部屋が作れないか考えてるところなんだけど…」
「部屋作る場所はあるの?作ったら、家中歩き回っても困らないしいいのにね」
(つづく)