数日経ち、ペットの世話に明け暮れていた百代の疲れも限界に達していた


この日、周吾の会社が休みのため、姉の代わりに自分で面倒を見ることになった


「姉さん、見舞いに行くんでしょ?ペットの世話ばかりさせてゴメンな。たまには自由にさせてあげるよ」


「ありがとう。病院行ってくるね」


百代は千聡のいる病院へ彼女の好物であるイチゴを持って見舞いに行った


「えっと…3F306号室だっけ。4人部屋ね…」


病室に行くと、顔色もよく、すっかり元気になっていた


(退院も近いな…)


「こんにちは。ちいちゃんが家に居ない間、ペットの面倒を見てもらうように頼まれたの」


「あら、お義姉さん、来てくれたのね。ペットの世話いつもありがとうね」


「元気になってよかったね~。ほら、ちいちゃんの大好きなイチゴだよ」


「うわぁ~嬉しい。これでまた元気になれる。ありがとう、お義姉さん」


「ところで、いつ帰れるの?」


「明日から三日間外泊なんだ」


「そうなんだ。やっと帰れるのね。でもまた病院にもどるんでしょ?」


千聡は外泊の許可をもらっていたのだった


「これから検査があるからね。お義姉さん、周ちゃんを宜しくお願いします」


「じゃぁお大事に。明日帰ってくるのを楽しみにしてるね」


「ありがとう」


そして、帰宅―


「ただいま~。あれ?カギがかかっている…周、散歩に連れっててるのかな?」


すると、マンションのオーナーがやってきて、


「ちょっと困るんだけど、お宅のペットの鳴き声で近所から苦情が出ていましてね、手放すかしてもらわないと、このマンションから強制退所してもらいますよ」


「そ、そんな…私は飼い主じゃありません。飼い主なら、どこかへ出かけております」


「だいいち、ペット飼育禁止になっているのに、この有り様では、もう手放すしかないでしょう」


オーナーの一言に百代の返答はしどろもどろだった


「そ、それは、私に訊かれても…本人しかわからないことですし…もうすぐ帰ってますから、それまでまってもらえませんか」


まもなく周吾がペットたちと一緒に帰ってきた


「どうしたんだ?」


「どうしたもこうしたもないでしょ。お宅のペットのせいで近所から苦情が絶えないそうですよ。ここでは、動物は飼ってはいけないって、入居前に訊かなかったのですか?」


「はい…」


「それはそうとも、動物については手放すか、里親に預けるか、何か方法を考えておかないとな」


「手放すって…」


(ペットは大事な家族なんだ!絶対に手放すもんか!)


「オーナーさんがおっしゃるのなら、里親に見てもらうか、親戚に預けるとか方法はあります。でも…」


「とりあえず、新たな飼い主を探すことだな。そうしないと、ここから出てってもらうよ」


オーナーはそう言いながら、この場を去った


(そんな無茶な…ローンがまだ15年あるのに、どうすればいいんだ…)


周吾は途方に暮れた


(なんとか里親を探してみるか)


「ペット飼えなくなったって…」


「なんで飼おうとしたの?」


「結婚してだいぶなるけど、まだ子供ができなくてね。俺もヨメも子供好きだし、姪っ子に会うたびにそう思うんだ。”周、お前んとこまだなのか?”とせかすし。だから、それを癒すために動物飼うことにしたんだ」


「赤ちゃんできないの、どちらかに原因があるのでしょ?」


「うん。ヨメがあんなカラダだし、子供はもうあきらめてるよ」


「養子もらうなんてどう?」


「血のつながらない子供は要らない。自分たちで作った子供でないと。他人の子供貰っても可愛がれないし」


周吾はいくら子供好きでも、他人の子供を我が子のように育てられない、と言っていた


「姉さん、すまないが、面倒を任せるよ。もうここでは飼ってはいけないんだ。近所迷惑になるし、そうしないと、ここを追い出されるんだ」


「ええっ?!ちいちゃんにはそのこと、ちゃんと伝えてるの?」


「まだだよ。ところでヨメはどうだった?」


「すごく元気だったよ。明日から三日間外泊だって」


「本当かい?ちょうどよかった!帰ってきたら、そのことで話そうと思ってたんだ」


(帰ってくるんだ…でもまた病院に戻るけど)


周吾は千聡の外泊の許可をもらったことで、とても上機嫌になった


(楽しみだなぁ~久しぶりの我が家、あいつもワクワクしてるだろうな)




(つづく)