周吾は、仕事で不在の時は、千聡にペットの世話をさせていた


だが、彼女が入院中のため、百代に世話を任されているのだ


(早くちいちゃん帰ってこないかな…私一人じゃこんなにたくさんの世話なんて無理なのに…)


百代は動物は苦手である


子供の頃、近所の犬に噛まれてから、怖くなった


「周、マンションでペット飼ってはダメって言われなかった?」


「別に。俺たち子供居ないから、犬や猫も我が子のように可愛がってるからな。隣近所に迷惑がかかる、なんて思ったことないよ。鳴き声が近所に聞こえないように気をつけてたし、吠えても、”うるさい”って言われたことないからね。親にはまだ内緒のままだし」


「上手くしつけてるんだね」


「もっと”家族”増やしたかったけど、よく食べるし、エサ代も給料の大半消えるからな」


傍で犬猫たちはおとなしく寝ていた


(こうして見ると可愛いものね…)


「動物園にさせるつもり?」と、百代は苦笑いした


「そこまでは考えてないよ」


(ほぼ動物園じゃない)


「あ、そうだった。晩御飯用意しなきゃ。冷蔵庫の残り物じゃ、イヤでしょ?」


「姉さん、食べに行かない?」


「でも、ワンニャン放っておくの?」


「1,2時間どうってことないさ」


二人は歩いて5分くらいの場所にあるラーメン屋に食べに行った


「ラーメン食べるのって久しぶり」と、百代は嬉しそうだった


「俺も久しぶりだな」


店内はさほど混んでなかったものの、次々と客が入ってきた


(わぁ、お客増えてきてる…結構有名な店かも)


「ここは、しょうゆトンコツが美味しいと評判なんだよ。行列ができる時もあるよ」


「私、これにしようかな」


「じゃ、俺も」


お待たせ、と注文して数分、ラーメンが二人のいるテーブルに運ばれてきた


「美味しそう!いただきま~す」


「うまいっ!!」


二人は久しぶりに食べるラーメンにスープの一滴も残さず飲み干していた


「ごちそうさま。ワンニャンたち、おとなしくしてくれてるかな」


「心配しなくてもいいさ。あ、エサ買うの忘れるところだった」


周吾はエサを買いにペットショップに行った


「わぁー、こんなにたくさん買っちゃって」


「それでも一週間あるかないかだな。それにカラダも大きいのもいるし、食べる量もハンパじゃないよ」


(そりゃあ、給料あっという間になくなってしまうわ)


帰宅すると―


ペットたちはおとなしくしていたどころか、お腹をすかしていたのか、吠えまくっていた


「ただいま~ほら、エサ買ってきたぞ。お腹すいてたんだろ?」


すると、下の階に住むおじさんがやってきて、


「お宅の犬たち、ずっと吠えていて、うるさくてたまらなかったよ。迷惑だし、手放せないかね?」


と苦情を訴えた


「だから、マンションじゃペット飼うなって言われただろ!」


「いや、何も言われなかったです。ペットには日頃から隣近所に迷惑がかからないようにしつけてきたつもりです」


「一度管理人に訴えっておくから、マンションではペット飼育禁止という、きまりがあるんだよ。わからずに飼ったのか?」


「入居の際にペットは飼ってはいけない、とは聞かなかったです。でも、ちょっと待ってください。ペットは大事な家族なんです。子供が居ないから我が子のように可愛がってます。だから手放したくないんです」


「でもね、ちゃんと規制があるんですよ。なぜ、聞いてなかったのか、でないと、ここを追い出されますよ」


「それから、ペット飼ってるのはウチだけじゃないはずです。なのに、飼ってはいけない、というのは納得いきません。

ペットを飼ってる以上、隣近所に迷惑かけたくないために、きちっとしつけてきました」


(おじさんはなにもわかってくれない…子供がいない寂しさを紛らわせるため…癒されるため…犬や猫も家族の一員なのに、おじさんは動物が嫌いだからあんなことが言えるのかと)




(つづく)