手術当日―
百代は、犬猫たちのにぎやかな鳴き声とともに目が覚めた
「おはよう。いよいよだね」
(しかし、にぎやかだな)
「寝過ごしちゃった。朝ご飯作らないと」
彼女は冷蔵庫の残り物を使って朝食を作った
二人は朝食を食べた後、周吾は、千聡が入院している病院に行く準備をした
「姉さん行ってくるよ」
「いってらっしゃい。手術成功すればいいね」
「うん、医師を信じるしかないよ」
周吾は、千聡の手術の付き添いのため、病院に向かった
彼は車を飛ばし、約10分後に病院に到着、千聡のいる病室へ行った
「おい、大丈夫か?」
「あ…周ちゃん来てくれたんだ」
「あードキドキするなぁ。成功するといいな」
「うん。早く治して赤ちゃんができるようになれればいいよね」
「子宮、全部取ってしまわないのだろ?」
「ガンはさほど大きくないからね」
やがて千聡は手術室に送られ、周吾は手術が終わるまで隣の待合室で待つことになった
(手術終わるまでだいぶ時間あるな…付き添いなんて必要あったっけ?それより姉さん、犬猫たちの世話ちゃんとできてるのかな…)
周吾は愛妻の病状よりペットの犬猫が気になっていた
自分の奥さんよりもそっちが大事なのか
彼は、彼女の手術は必ず成功する!、主治医たちを信じていたからだ
約5時間後―
「茗荷さん、手術は無事に終わりました。発見も早かったですし、全摘出は免れました」
主治医が手術室から出てきた
「そうですか!先生、ありがとうございます!!」
(やったー!!再発しなければいいが…それにしても長かった…)
周吾はすかさず百代にメールを送った
"姉さん、手術は無事に成功したよ!"
"ホントに!?よかったあ~再発しなければいいね"
しばらくして千聡も元の病室に移り、周吾は主治医から手術の経過の説明を受けた
子宮の三分の二を摘出したが、そこまでガンは広がってなかった
しかも発見も早かったため、全摘出は免れた
「よかったな。成功だったなんて」
「ありがとう。周ちゃん来てくれたおかげよ」
「何いってるんだ。医者の腕がよかったんだよ」
「そうよね。私、赤ちゃん欲しいけど、もうできないのかな」
「今からあきらめてどうするんだ」
「だって子宮取っちゃったんだもん」
「全部取っちゃったんじゃないだろ?子供できないとは限らない。三分の一の望みはあるはずだ」
「…私、周ちゃんを信じるわ。少しは前向きに考えないとね。きっと望みはあると」
「じゃ、俺は帰るから、ゆっくり休めよ。あ。それから出された食事はしっかり食べろよ。回復も早くなるから」
「ありがとうね」
帰宅―
「あー付き添いも疲れたよ。時間が長く感じたよ。手術は何とかうまくいったけど」
「おかえり。お疲れ様。ワンコやニャンコの世話がこんなに手がかかるとは~周がいない間ずっと吠えまくってたんだから。晩御飯まだ作ってないんだ。何か食べたいものある?」
百代は、その間外出もせず、ペットに付きっきりだった
主人が居なかったのか、おとなしくしていなかった
中には気性の激しい犬や猫もいて、彼女はエサをあげる時、腕や足を噛まれたり、引っ掻かれたりした
(痛いけど、ガマンガマン。いずれ、”商売道具”になるのにこんなになってたら…)
と、傷を見ていると、”モデルはもうできなくなるかも…”とあきらめざるを得なくなった
周吾は、
「どうしたんだ?すごく血が出てるじゃないか!」と、百代の腕から血がダラダラと出ているのを見た
「大丈夫よ。絆創膏とか包帯はないの?」
「救急箱なら、脱衣場にあるから、使ってもいいよ」
「ありがとう」
彼女は、自分で傷の手当てをして、これ以上犬猫に引っ掻かれないよう、しっかりと包帯を巻いた
(”主人”が帰ってくるとホントおとなしくなるんだから…)
(つづく)