翌朝、百代はTVをつけたまま寝ていた

そして起床―

「百代、起きろよ」

「あ、お父さんおはよう

「よく眠れたか?朝ご飯だぞ」

「うん」百代はキッチンに行き、用意してある朝食を食べた

その時、松倉から彼女の携帯に電話がかかってきた

"おはようございます。朝早くから失礼します。昨日はお疲れ様でした。今日の仕事は入ってきていないですから、ゆっくり休んでくださいね"

"はい、ありがとうございます"

「今日お休みだって」

「そうかあ」

(よっしゃあ!今日はゲーム三昧だ)と、百代は自分の部屋に戻った

そして大好きなネットゲームやアニメを観て過ごすことに

(また前の自分に戻ってしまうのか…)

数日経っても、あれ以来モデルの仕事が来なくなった

百代は心配して松倉に電話をかけてみた

"もしもし、松倉さんですか?茗荷です。なかなか仕事来なくて気になってたのですが…"

"あ、モモちゃんお久しぶりです!お仕事の件ですが…"

"実は、ウチの事務所が…"

"えっ…!?"

"倒産してしまったんです…"

"う…嘘でしょ!?ギャラはどうなるのですか?"

(せっかく新しい道を踏み出したばかりなのに…)

"本当に申し訳ございません。当所属のモデルやスタッフも全員解雇しました"

"なぜ…なぜですか"

"事務所に借入金の問題が起きてしまいまして、経営が行き詰まって、融資を受けようと銀行に頼んだのですが、もうこれ以上はできません、と断られてしまって…続けるのを断念せざるを得なくなったのです。ギャラはもちろん払いますから、心配なさらないで下さい"

"せっかくつかみかけた夢だったのに…それをたった一日で終わってしまうなんて…どうもありがとうございました"

と、百代は肩を落として、電話を切った

(どうしよう…明日からまたニート…とはいってももうニートだけど。お金は欲しいけど、いつまでも親に甘えてられないし、どうすればいいの…)

この日は、気落ちし、部屋に一日中こもりっきりで、そこから一歩も出なかった

娘の様子を心配していた両親は、

(どうしたんだ、あいつ。何があったのか…)

「百代、出てきなさい。どこか具合が悪いの?」

やがて彼女は、上下ジャージで、化粧っ気がなく髪も手入れせずボサボサといった、普段の姿で部屋から出てきた

「あら、どうしたの?」

「ううん、何でもない…」

「仕事なくなっちゃたの?」


「うん。事務所つぶれたの。ずっと仕事待ちしていたのに、何も連絡来ないから、おかしいな、と思ってたけど…」


「それは残念だな。やっとお前の晴れ姿が見られるようになったかと…」


「で、次の仕事探す気ないの?」


「あるけど…今はそれどころじゃなくて」と、百代はまた自分の部屋に戻った


彼女はベッドに横たわり、再びニートになった自分を責め、(まだモデルやりたかったのに…)と悔しさで唇を噛みしめていた


(また、私に声をかけてくれる人、いないかな…でも、”心の王子様”って、二度と現れそうでないなあ…)


こうして、百代は”夢の中”へ旅立っていった



(つづく)