百代は松倉に電話をかけた
「こんばんは。返事遅くなってごめんなさいね。このたびは声をかけていただいてありがとうございました。私、モデルになることに決めました」
「それはよかったです!さっそく登録をしておきます。お仕事の件ですが、後日ご連絡します」
「ありがとうございます!どうぞ宜しくお願いします」
数日後―
松倉の事務所"ラベンダー"から電話がかかってきた
「はい茗荷ですが」
「百代さん、いや"モモちゃん"って呼んでいいですか?雑誌の撮影がありまして、是非ともお願いします」
「ええっ?!」
(マジで…?!)
「主婦向けのファッション誌なんですが」
(ええっ?!私未婚なのに)
「モデルは主婦はもちろん、独身の方もいらっしゃるから、気になさらなくてもいいですよ」
(よかった…でも何着ていこうかな…上下ジャージじゃさすがにドン引きされるしね…)
百代はすぐさま撮影現場に向かった
「場所はどこだっけ?たしか…このスタジオかも」
地図を頼りに撮影現場にやっと到着―
「こんにちは~ここでよかったんですね。待たせてごめんなさい」
「モモちゃん、今日の服装すばらしいです!スタッフの皆さんも楽しみにしていましたよ」
彼女はひざ上が30cmという超ミニのニットのワンピースを着てやって来た
松倉もスタジオで待っていた
「はじめまして。茗荷百代です。皆さん宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします。茗荷さんって珍しい苗字ですね」
百代はカメラマンやモデル仲間に挨拶をした
「これから撮影に入りますよ。じゃあこれに着替えて」
「は…はい…」
彼女は撮影用の服に着替え、撮影が始まるとスタッフの前でポーズを決めてみせた
「すばらしい!何着ても似合いそうですね。かっこいいよ」
「ありがとうございます」
撮影はあれよあれよと終わり、
「モモちゃん、初めてにしては上出来でしたよ。ベテラン顔負けだし、NG一度も出さなかったのはスゴいですよ」
「私、若い頃はモデルのバイトをしていたんです。でも緊張しちゃった」
「だから慣れてたんだ~次回も頼みますよ。あ、今回撮影した写真はsmileme12月号に載せますので、それまで待ってて下さいね
「楽しみですね。でも自分が写っていると、ちょっと恥ずかしいな」
こうして、初めての仕事は無事に終え、帰宅した
「ただいま~」
「あら、お帰り。どうだった?」
「すごく緊張しちゃった。でも、スタッフの皆さんやモデル仲間から親切にしてくれたの」
「よかったね。モデルの仕事続けられそう?」
「うん。天職だと思ってやるしかないね」
「お~っ、百代か。今日のお前は輝いてるよ」
「まぁ、お父さんったら」
「しかし、お前はナイスバディだったとは。普段はダボダボのジャージ着ているから、わからなかったからな」
(それにしても、脚長いな。誰に似たのやら)
「私、夕飯いらないから、お風呂入って寝るよ。じゃ、おやすみ」
「まだ、8時半だぞ。早くないか」
「ううん、撮影中眠くなってきたから。明日はあるかないかわからないし」
百代は自分の部屋に行き、パジャマに着替えた
(この格好が一番落ち着く…)
そして、大好きなネットゲームやアニメを見ながら一夜を過ごした
彼女の部屋のあちこちに脱ぎっぱなしの衣類やゴミが散乱して、片づけることをせず、”汚部屋”状態、まさしく”干物女”だ
(つづく)