百代は、ニートを脱する決意をして、就活を始めることにした


(いつまでも親のスネカジリ、パラサイトじゃいけない。私がしっかりしないと。親の悲しむ顔はもう見たくないし)


「しかし、厳しいな…企業も若い人優先なんだな…」


百代は就活のために職安行っても求人誌読んでも、なかなか自分の希望する仕事が見つからない


(やっぱ、私に向いている仕事なんてないんだ…)


肩を落としながら、街をフラフラ歩いてたら、駅前の広場にある掲示板に、こんな貼り紙を見つけた


【従業員急募。年齢40歳まで。明るくやる気ある人求む。希望者は下記まで連絡下さい。0X0-XXXX-000(薊苔‐あざみごけ商事)】


(ギリギリじゃん。でも時給はいくらだろうか。何の仕事だろうか…まさか、ブラックじゃ…)


とりあえず、連絡先に電話をかけた


電話に出たのは、上司であろう、中年の男だった


「もしもし、薊苔商事さんでしょうか。駅前の掲示板に求人の貼り紙を見ました。従業員希望したいのですが…」


「はぁ?ウチは募集してないがね」


「でも、こちらでよかったのですよね?従業員急募、って書いてあったから…」


「あ、それはとっくに(募集は)終わったやつだよ。いつまで貼ってあるのかね」


(募集終わってるんなら、はがせばいいのに。ま、次あたってみるか)


「そうなんですか」


百代は街中トボトボ歩きながら、次の職を探すことに


「お腹すいたあ。でも、お金がないし…どうしよう…」


そこで、思いついたのが、デパ地下の食料品売り場だ


「あそこなら、ただで試食できる。行ってみよう」


やがて、駅前のデパートに着くと、店内は老若男女様々な客であふれていた


(平日なのに、有名店がひしめくだけあって、すごい客の入り…)


「あら、お姉さん、いらっしゃい。これうまいよ。食べてみて」


「え?いいんですか?いただきます」


惣菜売り場の店員は、ニコニコと百代を見つめている


「おいし~い。これいくらですか?」


「100gで260円です」


(た…高い!貧乏人には手が出ないわ…いつもは閉店前のスーパーで半額になってるから、それしか買わないし)


「あれ?お姉さん、今日はサービスデーなんで、安くしますよ。ここのお惣菜は100%国内産です。しかも無農薬・無添加ですから安心ですよ」


「え…けっ、結構です…ありがとう」


(やっぱ、貧乏人が来るところじゃないよね、デパートって)


それでも、お腹がいっぱいにならないから、どこかで腹起ししないと、飢え死にしてしまう


(このまま死んでしまいたいが…)


次に向かったのが、コンビニ


百代の財布の所持金はわずか27円だった


(これでは何も買えない。親からも小遣いはもらえないし”自分で稼いで食え”だもの)


結局、何も買わずに店を出た


”疲れた…ちょっと一休みしよう”と、公園のベンチに座った


「あ~あ、お金さえあれば、何不自由なく暮らせるのに」とため息を漏らした


「早く職を見つけないと」気は焦る一方だ


すると、見ず知らずの男から、


「お嬢さん」


(えっ…!私のこと?)百代は一瞬ドキッとした


「そんなとこで何ボーッとしてるんだ?ちょっと元気ないね」


男はスーツ姿でびしっと決めていて、背が高く、モデルを思わせるイケメンだった


(ひょっとして、この人…?)


「貴女はスタイルいいですね。脚も長いし、モデルなんか向いてるんじゃないかな?身長は何センチですか?よろしければ、スリーサイズも教えてください」


「169㎝、上から90‐57‐86です」


「まさに完璧じゃないですか!!それなら十分通用しますよ!それに、肌も透き通るようにキレイですね。普段はメイクなさらないのですか?」


「メイクは化粧水つけるだけです」


「失礼ですが、おいくつですか?」


「来月で40になります」


「見えませんよ!まだ20代かと思いましたよ。実は、貴女にお願いがありまして…」


「えっ、まさか…?!」




(つづく)