幹は、コンビニで時間が経つのを待っていると、
『お兄ちゃん!』
アサミが何かを買いに店に来た
『バイト疲れたあ~また夜も行かないと』
『え?夜もあるの?』
『うん』
『無理するなよ。でも、ま…まさか、お水の仕事じゃないよな?』
『コンビニって言ったじゃない』
(あ…そうだったか…)
アサミは軽く夕食をとって、服を着替えた
大きな胸をちらつかせ、派手すぎるメイク、盛り上げた髪にはたくさんのヘアアクセ、そして胸が大きく開いたドレスで、全身きらびやかな衣装を身にまとい、彼女が”エリー”として変身した姿だ
(コンビニの店員って、そんな格好しないだろ、普通は…制服に着替えるにせよ…)
幹はアサミの”キャバ嬢”としての姿は、まるで別人みたく感じた
だが、彼には”蘭。”でバイトをしていることはわかっていない
(お水だろ、どう見ても…ア…ダメだ…そこばかり目が行く…)
『じゃ、いってきま~す♪』
一方、夕子は―
(どうも幹の様子がおかしいのよね…)
新しい彼女ができたとしか思えない
(あたしって、そんなに魅力ないのかなあ…彼には妹が居るのは知ってるけど、まだ一度も会ったことないもの)
一度別れる、と言い出したものの、彼女ができたにせよ、それでも、彼のことが忘れられない
しばらくして、幹からメールが来た
”ゴメンよ(ノω・、)せっかくの時間台無しにしちゃって
もう俺とは付き合わないつもりなのか・
まだ、別の女ができたんじゃないんだ
やはり、俺には夕子以外考えられないんだ”
(本当なの?信じたくないわ…だったら、なぜ帰ったの…)
夕子の目には、涙を浮かべていた
別れるといいだしたのに、やり直しができろかも、と
とりあえず、距離を置いて様子をみることにした
”蘭。”では―
『エリーちゃん、相変わらずセクシーだね~マシュマロパイにクギづけだよ』
『もう、おじさんったら、胸ばっか見るんだもん』
『チューチューしてもいい?』
『そ…それはやめて。触るのならいいけど』
中年客は、今にもドレスからこぼれそうなアサミの胸を軽く触り、
『気持ちいい~~~やっぱエリーちゃん最高♪』
『あたしも、この仕事やめられない♪』
『エリーちゃん、今度ホテルに行かない?』
『マジでぇ~嬉しいなあ~♪』
(ぶっちゃけ、あたしの好みじゃないんだ。おじさんって苦手だもん。気持ち悪いし。でも、仕事だと割り切らないと。キャバ嬢って嫌な客でも相手にしないとね)
そして、帰宅―
『ただいま~♪お兄ちゃん、家に帰ったのね』
アサミは、こんな格好ではヤバいと思い、パジャマに着替えた
(午前中のバイトがないから、ゆっくり眠れる~)
幹の自宅では―
(今日も四六時中アサミのことを考えると眠れない。どう見ても、あんな派手な格好でコンビニへ行くわけがない)
幹はベッドで横たわってるが、寝つけない
彼の携帯の着信音が鳴った
夕子からのメールだった
”こんばんわあ~♪
夜遅くごめんね~
彼女できてなかったんだ、
よかったぁ~(´∀`)
そう思われると嬉しいな♪
あたしもね、みっちゃんしか考えられないよ
みっちゃんが心の支えになってくれてるんだもん
また、いつか会おうね♪”
(アサミをとるか、夕子をとるか…)
それでも、幹は迷いがあった
夕子は恋人というより、友達
アサミは妹というより、ペットみたいなものか
幹は夕子の将来のために、週3回バイトをしている
2人は同じバイト先で出会った
夕子は幹より2才年上だが、彼の年下とは思えない落ち着いた話しぶりやファッションは”大人なんだな”と感じさせる
そして、妹のアサミはとても17歳には見えない
ぱっと見、20代に見える、いや、それ以上かも
特に”エリー”に変身した時は同じ人には見えない
”大人の女”のフェロモン全開といったところか
別に年齢がバレなかったら、十分通用できるのだ
幹は、アサミを妹としてではなく、”一人の女性”として見ているのだろう
しかし、彼には夕子という、れっきとした彼女がいるのに…
夕子には、2人の”関係”を知らされていない
彼自身しか知らないことだ
もちろんアサミも…
(つづく)