*この物語はフィクションです。登場する人物・団体などの名称はすべて架空のものです。




とあるキャバクラ――

『いらっしゃい~♪ご指名は?』

『エリーちゃん、お願いできないかな?』

(さすが指名№1キャバ嬢!)

『エリーちゃん、店一番人気だからね。きれいだし、グラマーだから、つい目線がそっちへいっちゃうんだな~』


”エリー”こと月森アサミ、17歳

”エリー”とは、源氏名である

高校を中退し、年齢詐称して、キャバクラ”蘭。(らんまる)”でアルバイトを始めてまだ3か月なのに、他のキャバ嬢をおさえ、いまや指名№1となった

17歳とは思えない美貌と華奢なのにはちきれないばかりのボリュームあるバストに客たちはクギづけ、

落ち着いた接客もベテラン顔負けだ


オーナーらは、アサミが年齢を偽っていることについては、誰も知っていない

彼女は履歴書に自分の生年月日を2年上げて書いていた

彼女には5歳上の兄、幹がいる

幹には内緒でバイトをしている

(今のところ、バレずにやってるが、もしバレたらどうしよう…)


幹はアサミを溺愛している

たった一人の自慢の妹だ

そんな彼にも悩みがある

れっきとした彼女が居る

彼女の名は花山夕子、2歳上でバイト先の先輩だった

付き合い始めて3年になる


”みっちゃん、あたしたち付き合い長いからそろそろ考えようよ”といってくれるものの、本気にはなってないようだ

その陰に、妹・アサミの存在がある


”蘭。”では――

『エリーちゃん、いつ見てもセクシーだね。大人の色気プンプンふりまいちゃって』

アサミは今にも大きなバストがこぼれ落ちそうな、胸が大きく開いたドレスを着て、客を挑発していた

『あたしの売りはこれなのよ』

『エリーちゃんにはすごいオーラがあるよ』

しかも、細く引き締まったウエストなのに、付くべきものはしっかり付いている

『ちょっと触っていい?』

『あら、やだ~、オジサンったら』

(なんてマシュマロみたいにフカフカしてるんだ…)

中年客はアサミの胸につい目がいってしまう

彼女は体は華奢なのに、胸の大きさがよけいに目立つのだ

客らは彼女のはちきれそうなバスト目当てに指名が絶えない

まだ、キャバ嬢になって日が浅いが、どこかオーラを感じさせるものがある

『わあ~ありがとう♪あたし興奮しちゃった♪』

(これだから、キャバ嬢やめられないんだ)


アサミは家賃の安いアパートで一人暮らしをしている

仕事が終わり、帰宅

『ただいま~あれ?誰か居る…』

(不審者なの?)

『おかえり、アサミ』

『びっくりした~お兄ちゃん、どうしてここに?』

『遅かったな。俺、心配だったから待ってたんだ。ところでどこ行ってたの?』

『バイトなの。コンビニだけど』

アサミが住むアパートで幹は待ち伏せをしていた

カギは合いカギを持っていたので入ることができた

(それにしても、コンビニでバイトするのに、その服装でするのか?制服に着替えるにせよ、メイクがやばくね?なんかお水っぽいよな)

『ちょ、ちょっと、お兄ちゃん、どこ見てるの?』

『あ…ゴメン、つい…』

(コンビニだったら怪しまれることないけど…)

『アサミ、ちょっといいか?』

『えっ、な…何するの?』


幹はアサミの上着を脱がすと、その大きなバストがのぞきだした

(なんてデカいんだ…白くて柔らかい…しかもウエストは折れそうなほど細い…夕子と大違いだ…)

まるで、ゴムマリをくっつけたような大きさに、幹は圧倒されていた

彼は興奮のあまり、アサミの胸をつかもうとすると、

『や…やめて、お兄ちゃん!』

アサミはバイト疲れか、ベッドの上に倒れ、ぐったりしていた

(また新しいバイト始めたのか…学校辞めてからロクなことしないな、あいつ)


アサミが高校中退したのは理由がある

もともと彼女は問題行動を起こしやすく、喫煙や飲酒は当たり前で、そのため、教師らから問題児として目をつけられていた

辞める決め手となったのは、彼女が中学時代からの友人らと集団万引きや金をまきあげていたところを見つかったからだ

両親は子供のしつけに厳しい方でなかったが、さすがに、

”なんて親不孝な娘なんだ!この恥さらしが!しょっちゅう迷惑かけやがって!!もうお前は私の娘ではない!”とアサミを勘当した

終いには”家を出てけ!”だったもの

アサミは学校をやめ、一人で暮らすことになった

それでもアパートの入居の手続きは親がしてくれた

それからは、バイトをしながら生活している

”蘭。”へは、店の求人の貼り紙をみて応募した

履歴書には”19歳”と書いた

即採用された

(18歳以上からだったし、齢バレたらあたしだけじゃなく店もダメになっちゃうもの。うまくバレないようにしないと…)

『お兄ちゃん、なんで帰らないの?まだあたしの側に居たいの?』

『お…俺…ずっとここに居たいんだ!アサミが大好きなんだ!』

『でも、お兄ちゃん、彼女いるじゃない?』

『あいつはただの友達さ。なんてお前は立派な体してるんだ!好きだー!!大好きだー!!!』

(え…)

アサミの表情が凍りついた

(お兄ちゃん、いきなり気持ち悪いよ…)

『俺は寝ても覚めてもお前のことばかり考えてる。夢の中では、胸に顔を埋めてみたい、手をつないで寝たい、とにかく俺の好き放題にしてみたい。もしお前が他人なら、結婚したかったよ』

『冗談でしょ?あたしみたいな親不孝な妹なんて必要なくね?』

『いや、俺は必要なんだ』

『そういってくれるとあたしも嬉しいよ。イケメンの兄ちゃんが居るだけで』

『イケメンだなんて、夕子は言ってくれなかったぞ。今夜は一緒に寝よう』

(本当に気持ち悪いな、お兄ちゃん…)


アサミは胸が人並以上にデカく、すごく目立っている

街を歩くたびに、視線が胸ばかりに向けられて嫌な思いもしたが

しだいにコンプレックスとは思わなくなり、むしろ、それを生かしたいため、キャバ嬢をしたかったのだろうか…



(つづく)